特任助教 関本仁
これまで主たる研究として、社会教育史、特に講義録(現在の通信教育)についての歴史研究をおこなってきました。勉学への希望を捨てず、勤労学生として夜間部や各種校外教育活動に参加していった人たちそれぞれが地域の中でどのように学んでいたのか、独学で主体的に学ぶ人たちの学びに対する考え方や、周辺地域の中で、同じような志をもつ人々とのつながりを強く求めていた人々の思いを掘り起こす研究をおこなってきました。
同時に、教育活動として看護師養成課程の基礎科目「教育学」を担当し、そのなかで「生と死の教育(死の準備教育)」と題した単元をもうけ、死生学への理解を図ってきました。E・H・エリクソンの「ライフサイクル論」を援用し、社会教育・生涯教育の視点から「生と死の教育」を捉えました。差し迫った死に直面した人たちばかりではなく、壮年期・老年期を含めたあらゆる発達段階にある人々に課題があり、そこに目を向けることができるようにすること、それぞれの発達段階における喪失体験、いわば「小さな死」と向き合うことが最終的に自我の統合へとつながるのだ、ということを教えてきました。ひとがどのように死を迎えるかというのは、そのひとがそれまでどのように生きてきたのかということの裏返しとも言えます。充実した日々を過ごしてきたのならば、思い残すことというのは限りなく少なくなるでしょう。思い残すことがないようにしっかりと一日一日を過ごすことが、あるがままの死を受け入れられることになるのではないでしょうか。
「エンド・オブ・ライフケア」とは、従来の「ターミナルケア」や「緩和ケア」の範囲を越え、差し迫った死について考えているひとをはじめとするあらゆる人びとが「これからどう生きていくか」ということを問い、その実現のために導き出された考え方・方針について、家族をはじめとした人びとが共有し、それが実現できるよう支援していくことであると考えます。
患者とその家族たちが「どのように生きていくか」を考えていく際に、彼らを取り巻く地域といかに関わるか、そして地域がいかに彼らを支えていくか、ということも併せて重視していく必要があります。これまでに核家族化がすすみ、ひとり暮らしの高齢者が孤独死として発見されることがけっして稀なことではなくなってしまった現代日本において、介護・看取りを支える地域コミュニティを構築していくことは急務です。
「生と死の教育」に関する教育の実践を下地として、看護職を志すみなさんが死生観についての深い理解ができるよう、他分野との連携をしっかりと見据えながら、有機的かつ効果的なカリキュラム作りに参画していくことにより、地域における患者とその家族の生活に合わせた終生期ケア体制の確立に貢献していきたいと思っています。