エンド・オブ・ライフケア看護学への千葉大学の取組

生きるを考える/2011年度

普遍教育「生きるを考える」第7回の様子

難病の人々と家族のエンド・オブ・ライフケア

[日程]平成23年11月15日 III時限/12:50〜14:20(場所 B)
[講師]村岡 宏子(東邦大学 教授)

  • 講義の様子
    講義の様子
  • 村岡 宏子先生
    村岡 宏子先生

受講生の感想

はじめに、今回の講義で焦点をあてる筋萎縮性側索硬化症の概略について説明がありました。この病は、随意筋が侵される病気で、運動障害、構音障害、嚥下障害、呼吸障害を引き起こす原因不明の神経難病であること。そして、思考能力、知性、性的能力は失われず、患者は病気の進行を自ら目撃することになるという過酷さが伴うこと。治療は1999年にリゾールが保険適応になったものの対症療法は主であるという現状が説明されました。

次に、村岡先生がおこなってこられた3つの研究についての説明がありました。ひとつは、患者がどのように病を意味づけるのか、二つ目には、介護者について、そして患者が亡くなった後の家族について。患者は病に対し、戦略的補完行為、鏡像行為、超越行為を取ることが結論づけられたといいます。介護者は、関係が濃密化し身体感覚の共有が起こることにより他の介護者、更には子どもでさえも介護の場から排除してしまうことになるといいます。患者が亡くなった家族には、記憶の断片化がみられたり、介護者における未完の仕事がその後の社会参加に繋がることが説明されました。

更に、長期療養により生じる問題点について、患者自身の問題、介護者の負担感、ヘルパーや訪問看護師の導入への抵抗について説明されました。

今回の講義で特に印象的だったのは、人工呼吸器装着の割合が日本は20~30%に対し、欧米は3~5%であり、日本における内訳は、呼吸器を装着しない74%、する17%、患者の意思を確認しないまま装着する9%というものでした。意思決定は患者と家族に委ねられる傾向にあるが、患者は装着しないと意思決定したが家族が反対し装着した場合、患者が大変辛いことになり、患者が装着しないと意思決定し家族もそれに従った場合、家族が後々後悔するということでした。

患者と家族への看護については、実際の映像で紹介されました。また、VTR“やったねとうさん”では、自宅で暮らす人の日常を、家族やそれを支援する人たちも合わせてイメージできました。

感想としては、今回は人工呼吸器を装着する選択をした患者さんの生きることを支える看護に焦点が当てられていましたが、自らの意思で呼吸器をつけないことを選択した患者さんのケアも、エンド・オブ・ライフケアでは重要な課題になると思いました。また、先生も、最後に述べておられましたが、共感疲労の現象に対する対処の方法を考えることも、介護する家族や医療者にとり大切な視点であると思いました。