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取組レポート
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2007年9月8日(土)

ワークショップ II
テーマ:患者と医療者の認識の 隙間を《つなぐ》

医療職者あるいは医療機関の間では連携の重要性が認識され、各々の専門分化による隙間をつなぐ取り組みが進展しつつあります。一方、患者・家族とケア職者、医療機関の間では、どのように認識の隙間をつないでいるのでしょうか。 今回、ケア職者との関係性における患者・家族の認識に焦点をあて、そうした認識の背景となる状況や要因の分析方法を学習しながら、ケアを改善するためのワークショップを実施しました。

時間:13:30〜16:30
場所:千葉大学 西千葉キャンパス けやき会館 レセプションホール(3階)
参加者:患者会の方々、千葉大学大学院看護システム管理学修了者・在学生、看護学部教員 60名


患者も医療者も笑顔であるために 〜目的を見失わない医療・看護をめざして
病院看護システム管理学 入江昭子
医療制度構造改革が進む今日、細分化された専門分野をいかに統合して、医療者間の連携を行っていくかは、看護管理者にとって特に重要とされています。同時に、対象である患者様、その家族とよりよい関係を築き質の高い医療、看護を実践していくかという課題は医療者である限り、職種を問わず、どこの施設のおいても達成していく目的となります。
そこで、今回の講演やグループ討議において、患者会、他職種、他施設と共に語り合うことで、患者と医療者間の認識の隙間には、コミュニケーションにおける心、スキルの問題が大きいことを切実に知る機会となりました。特に、患者の立場から「患者のためにと思っている医療や看護が、患者にとって異なる」という言葉が大変厳しく心に残り、私たち医療者は目的を見失っているのではないかと考えさせられました。反面、「患者も医療者も笑顔が一番」という言葉を受けて、認識の隙間をつなぐには、医療者のひとつひとつの行動に根拠を持ち、サービスへとつながるように努力することと、本来の私たち医療者の目的は何なのか、ということを見失わないことが大切であるということを学びました。
今回、ワークショップTにつづき、現職のまま職場の課題を取り組む大学院生の私としては、より多くの看護管理者と共に学び、考える機会を是非、身近な仲間と得たいと考え、職場の同僚である看護管理者と共に参加させていただきました。今回のワークショップをきっかけとして気づかされた課題に、これから取り組んでいきたいと考えます。
ワークショップUに参加して
地域看護システム学専攻 島里慶子
「患者になって初めて患者の痛みや悩みが分かった」と話す医療者がいる。しかし、すべての病気を体験できる訳もなく、不可能なことは言うまでもない。「実際の患者の体験」や「患者の心の叫び」である、医療者に対する要望や意見を聞かせていただき、共にディスカッションができた今回のワークショップは数少ない経験であり、大きな収穫のある経験であった。活字になった書物等でもその機会は得られるが、自分の言葉で語られるそれには、活字では味わえない感情や思いがより一層伝わってきた。
また、論理ツリーやピラミッドストラクチャー(認識の背景となる状況や要因の分析方法)などのコミュニケーション技術を身につけることも、医療者の教育に取り入れる必要があると感じた。
今回のワークショップの企画は患者と医療者の認識の狭間をつなぐ大きな機会となったに違いない。
(国家公務員共済組合連合会平塚共済病院 医療連携支援センター師長・教育担当室師長)
患者会の必要性を再認識しました
支えあう会「α」 五十嵐 昭子
「患者と医療者の認識の隙間を《つなぐ》」というテーマにまず心が引かれました。看護の側からこの問題に取り組む人たちが生まれてきているのだなぁ、とうれしくなりました。基調講演をされたあけぼの千葉代表の斉藤さんは福祉環境交流センターを一緒に使わせてもらっている仲間ですが、彼女もおっしゃっていたように、10年前には患者の声を医療者に届けること自体が大変な努力を要したことでした。
グループ討議では、まず、それぞれがこのワークショップに参加した動機を自己紹介を兼ねて話しました。看護職の方が多かったのですが、「自分の身内が入院し、クリニカルパスが終わったら、状況は良くなっていないにも拘わらず退院を迫られた」「自分の身内ががんで余命が少ないことが分かったとき、それを本人に言えなかった」「看護師として患者さんの話を聴いているつもりでも、『同じ部位のがん患者の話が聴きたい』と言われてしまう(当事者と医療者のかべを越えられない)」といった問題意識をもち、このワークショップで何らかのヒントが得られるのではないか、と期待しての参加でした。
簡単に答えが出るとは思いませんが、患者・医療者のコミュニケーションギャップを埋める方法は、こういった問題意識をもって患者の話を真摯に聴く、というところからしか始まらないのではないかと思います。
私も現役の検査技師です。病院では「患者」という断面でのおつきあいになりますが、患者会ではその人の人生上に起こった出来事として病が語られます。そこを理解するところから認識の隙間をつないでいくしかないのではないかと思います。とはいえ、忙しい仕事のなかでそこまで話を聴く時間が取れるとは思いません。だからこそ、患者会の存在が必要ですし、患者の要望を医療者に伝え、医療者の説明を分かりやすく翻訳して患者に伝える医療コーディネーターという仕事が社会的に認められていく必要があると考えています。
患者と医療者の認識の隙間をつなぐ「コミュニケーションの技術」
千葉乳がん患者の会「ねむの会」 金井弘子
9月8日、千葉大学にて第2回のワークショップ「患者と医療者の認識の隙間を《つなぐ》」が開催されました。がん対策基本法が4月に施行された前後から「患者中心の医療を!」という流れは全国的に広まりつつあります。どんなに「患者中心の医療を!」と叫ばれても医療者と患者側の認識に相違があれば意味がありません。
今回のこのワークショップはケア識者との関係における患者・家族の認識に焦点を当て、ケアの改善に取り組むとのことで患者体験者としてはどのようなお話が聞けるのかと期待を持って参加させていただきました。「コミュニケーションの技術」と題しての特別講演は時を得たもので医療者にも患者にも必要な技術と思いました。グループワークではそれぞれ「認識の相違」の実例を出し、グループ別に発表して認識を全員で共有し合い、この日のワークショップがより有意義なものになったように思いました。