
サブプロジェクトE: 日本型看護効果測定ツール開発
1.目的
2.研究組織(平成17年度)
3.平成17年度までの研究成果の要約
4.主要な研究業績
1.目的
本サブプロジェクトでは、日本文化型の看護の視点に基づき、1・看護ケア実践のアウトカムを測定するQOL評価尺度開発、2・「自我発達」ならびに「セルフケア」に関する看護効果測定ツールの開発と看護実践モデルの開発・検証、3・健康教室に係る文化的要件の明確化を目的とした。
2.研究組織(平成17年度)
前述の1〜3について、研究班を6班に分け、研究を進めていくと共に、研究の進捗状況や成果について、合同会議を持ち、意見交換を行った。また、昨年度から引き続き、北京大学看護学院との共同研究を進めた。次年度以降は、関連のサブプロジェクトに統合して研究を進めていく。
リーダー: | 正木治恵 |
サブリーダー: | 栗山喬之(医学薬学府)・高橋久一郎(社会文化科学研究科) |
テーマ1: | 既存の看護効果測定ツールの整理・体系化と使用可能性の検討 (正木治恵・清水安子・北島美奈・長瀬明日香・島田広美) |
テーマ2: | 看護ケアによる患者の日本文化型QOL尺度の開発 (北池正・緒方泰子・劉新彦・南島多麻美・栗山喬之・高橋久一郎) |
テーマ3: | 「自我発達」に関する看護効果測定ツールの開発 (酒井郁子・小野幸子・遠藤淑美・正木治恵) |
テーマ4: | 「セルフケア」に関する看護効果測定ツールの開発 (清水安子・黒田久美子・内海香子・正木治恵) |
テーマ5: | 日本の母親教室の変遷からみる文化的要因
(新野由子・正木治恵) |
テーマ6: | 認知症と糖尿病に焦点を当てた予防教室の日中比較研究 (正木治恵・清水安子・高橋良幸・張平平・鳥田美紀代・菅谷綾子・周宇彫(中国)) |
3.平成17年度までの研究成果の要約
各テーマの研究成果の概要は次の通りである。
テーマ1: | 日本文化型看護の視点から看護効果測定ツール開発について検討した。 |
テーマ2: | 作成したQOL評価指標の妥当性・信頼性を検討する調査を行った。 |
テーマ3: | 看護実践モデルの一環として「自我発達」援助評価ツールを開発した。 |
テーマ4: | 看護効果測定に活用できる糖尿病患者セルフケア能力測定ツール試案を作成した。 |
テーマ5: | 日本の母親教室等の変遷について文献検討を行った。 |
テーマ6: | 文化の視点を明確にした日中共同研究を実施に向け、相互理解を深め、具体的な検討に入った。 |
研究班の一つである、テーマ2に関する研究成果の報告を以下に紹介する。
[医学の領域では、患者立脚型アウトカム(Patient-based Outcomes)に関する様々な研究が行われてきており、QOLは医療評価のための指標として明確に位置づけられつつある。
看護の分野においては、医学と共同して開発してきた経緯はあるものの、看護独自の視点からのQOL評価指標の開発は少ない。このため看護学の視点から開発を行うことを目的とした。日本文化型の看護の視点に基づき、看護ケア実践のアウトカムを測定するQOL評価尺度開発に向けて、フォーカス・グループ・インタビューでのデータ分析を通じて、暫定版看護ケア結果評価QOL尺度を作成した。さらに、暫定版QOL評価指標の信頼性と妥当性を検証し、実用化に向けて検討するために千葉県内の医療機関を対象に調査を実施した。
千葉県内100床以上の医療機関139施設に対して、調査の趣旨を説明し協力の同意が得られた24施設から回答を得た。回答のしやすさ、構成概念妥当性と基準関連妥当性(WHO指標との関連)からみた妥当性の検証、内的整合性からみた信頼性の検証を行った。暫定版QOL評価指標は、88の設問からなり、これらは大きくは「病気や療養について」「日常生活について」「気持ち」「情報や環境」「家族や周囲の人との関係」「家族や周囲の人の協力や支援」「楽しみや生きがい、希望」の7群に分かれるが、おおむねこの構成が支持された。また、暫定版QOL評価指標のスコアが、受けてきた看護ケアと関連が認められるのかどうかを検討するために、疾患名、治療期間、入院期間、過去1年間の看護師とのかかわりなどとの関連を調べた。対象の選定や看護ケアの定義が明確でなかったため、今後は実用化に向けてこの点の評価をしていきたい。
4.主要な研究業績
1.清水安子,黒田久美子,内海香子,正木治恵:糖尿病患者のセルフケア能力の要素の抽出−看護効果測定ツールの開発に向けて−.千葉看護学会誌,11(2),23-30,2005.
1.北池正,緒方泰子,劉新彦,南島多麻美:看護効果実証に向けたQOL評価指標の開発
(第3報)信頼性・妥当性の検討.第65回日本公衆衛生学会総会,2006.
