講演会アンケートおよび質疑応答から
2011年3月の講座開講記念講演会の際に、ご参加された皆様からアンケートや質疑応答をいただきました。ここではその内容を抜粋・編集したものを掲載いたします。
「エンド・オブ・ライフケア」と「ターミナルケア」や「緩和ケア」との違いはあるのですか?
- 今までは終末期を迎えている患者をターミナルという言葉で表していたがエンド・オブ・ライフケアという言葉では終焉に向かう患者への表現の仕方を変えることになるのでしょうか。
- ターミナルケア以上に広い範囲での新しい見方なのでしょうか。未だよくわかりません。
- 今まで高齢者の死を考えた時、ターミナルケアとは違う意味があると感じていたので、エンド・オブ・ライフケアというとピンとくる感じがある。
- ターミナルケアは病院で行われるケアであり、あまり身近でなかったためエンド・オブ・ライフケアは地域看護職と病院ナースが連携してするものなのかなと感じる。
エンド・オブ・ライフケアはどういった人を対象としたケアなのですか?
- 終生期にある患者、家族の希望を支えるケアで、その対象は患者本人からその家族まで幅広いのではないか、そのことがとても大事だと思う。
- 全ての疾患や年齢において展開されることが重要と思う。
- がんに限らず、全ての人々へのケアであり広いもので、がん以外の人も対象となることが今後の医療の在り方や専門職の関わりに明るい見通しを感じる。
- 疾患や年齢、原因に問わず、人生の最期に向かっている人やその家族がその人らしく生きるために必要とする全てのケア。
- 自分らしく生き抜くための手助けや導きとなるもの。
- 緩和ケアとほぼ同意語で、がん以外の疾患の方を含んだ看護といったイメージ。
エンド・オブ・ライフケアのイメージが湧かないのですが。
- 明るい前向きなイメージを持ちます。
- ターミナルという今までの寂しいイメージより明るい感じ、前向きで大衆的かな。
- 「理想だ」というきれいすぎるイメージ。
- 人生の終わりを充実させたいという生き生きした感じ。ターミナルより受け入れやすい。
- 自然で明るい、そのままを受け入れるという肯定的なイメージがわく。
- 穏やかで前向きというイメージ。
- 人生の仕上げ、成長といったことをイメージする。大切な時期のケアだと思う。
- QOLを大切に「生」を考えるというイメージかな。
- 生命の終わりというイメージ。
- 「静」
- 温かいイメージがありつつも、どこか遠いところにあるイメージ。
エンド・オブ・ライフケアって難しいという印象ですが、どうしたら社会に広げて行くことができるでしょうか?
- 学生対象の講座が中心と思われるが、その中のいくつかを公開講座として一般に開放してはどうでしょう。
- 一般の病院、地域や福祉施設の人にも参加してもらうような機会を作るといいのではないでしょうか。
- 介護職や医療職、家族など多職種参加の活動を行い、どのように協力し合っていくのかについて話し合う機会を作るのはどうでしょうか。
- 町の相談室などを作ってはいかがでしょうか?
- 日本のマギーズセンターのような場を作ってほしい。
老人高齢者施設に入院してくるがん患者など重い疾患の方のエンド・オブ・ライフケアを考える上で、どんな課題があるでしょうか?
- 認知症ケアの場では、がんというだけで怖がってしまう看護職、介護職スタッフがいます。末期がんということが看護師だけでなく介護スタッフにとっても、とても特別なことに感じてしまうので、どういうふうに接すればよいのか手探り状態で遠巻きにみている状態になるのが実際です。とても難しい。
- 高齢者施設では看護師が主体でなく介護スタッフが主体になると思う。介護職の学んできたことはが高齢者の認知症の方に対するケアなので、がん患者や医療処置を伴う方のケアの仕方がわからない。彼らには経験がないため不安になり、それが入居者に伝わりお互いギクシャクする状態がある。
- 看護師が中心になって進めて行けばメインになると思うが、それだけなく同じ施設で働くケアスタッフ、ケアマネージャー、いろんな方が関連していける道しるべが必要だと思う。
- 老人保健施設では、介護士、福祉関係のプロフェッショナルが主に働いていると思いますが、これからは、がんのような重い病気、特に医療の支援が必要な方も入所してくる可能性が高いです。ですから、看護職者がリーダーとして引っ張っていく、主に関わっていくウエイトが大きくなると思います。看護職者がリーダーシップをとって老人福祉施設の方でも重い病気の患者さんがいらしても満足のいく質の高いケアができるかというところを考えていかなければならないと思います。
- 現在は看護職の働く場が急性期療養に集中しており、病院の中でも外来ですとか訪問看護ステーションや福祉施設、あるいは回復期病棟での看護職の不足というものがエンド・オブ・ライフケアを充実するための障害になっていると思う。福祉の現場にも看護職は必要で、そういう場こそ、慢性疾患看護CNSなどのエキスパートのナースが必要であり、リーダーシップをとっていけることが大事になってくると思います。
胃ろう、経管栄養、点滴そういうものの導入、中止、差し控えに対する家族の揺れがあることや医療職者、医師も看護師も9割がその選択や意思決定をするうえで困難を感じていると聞きます。こういった課題にはどのような解決策があるのでしょうか?
- やはり看護師がその橋渡し役として患者・家族への情報提供の在り方、医療者間での情報の共有などに関わることが大切であると思う。
- 看護師が患者や家族の揺れを支えることは非常に大事なことで、一般の人もそのように期待していると思う。しかし、看護師がすべてを背負うというのではなく医療職皆が揺れるので他のスタッフや家族の力を借りながら、看護師自身の揺れをどう支えるのかを考えることが大切と思う。
- 医療職者が揺れているということは本当にそうだと感じます。エンド・オブ・ライフの終末期や終生期に関しましては正解のない領域ですので、患者さんやご家族と医療職者が話し合いながら、どれが一番いい方法なのかを考えながらやっていくことが大切だと思います。医療職者も時には垣根を越えて、同じ目線で患者さんやご家族と話合っていく姿勢が大切だと感じています。
- 私も同感です。私自身は退院支援・調整に関わっていますがとてもジレンマに陥りやすく、退院先の決定に関してこれまでの自分のパターナリズムであるとか、病棟のいつものやり方とかが気になって、それを守ることに気を使って「本当にこの患者に必要なことは何か」を素直に話せない自分を感じ、自分ひとりで悩んで抱え込んでしまうことがあります。