研究概要

 先行研究により,わが国で初めて計量心理学分析により信頼性と妥当性が検証されたJ-CCCHS(The Caffrey Cultural Competence in Healthcare Scale)を用いて,2015年のわが国の看護職のカルチュラル・コンピテンスが測定され,同時に看護職が外国人対応で困っていることの概念化により(図1)教育モジュールの検討を進めている。
 これらの基盤研究の上に位置づけられる本研究のPhase1では,能力向上の教育モジュールを作成評価,外国人ケアパス,ガイドラインの開発, Phase2では,臨床活用による患者アウトカムをターゲットとしたガイドラインの臨床評価研究を行う。Phase3の2021年には再度看護職のカルチュラル・コンピテンスを測定し結果評価とする。初年度および最終年度には,市民が参加しやすい国際シンポジウムを開催し,研究成果の普及に努める。研究工程図を図2に示した。

図1. 看護職のカルチュラル・コンピテンスの能力開発領域 (先行研究結果からの概念図)

アジア圏における看護職の文化的能力の評価と能力開発・臨床応用に関する国際比較研究 [ANCC]

図2. 研究工程図

アジア圏における看護職の文化的能力の評価と能力開発・臨床応用に関する国際比較研究 [ANCC]



研究実績の概要(令和2年度分)

 令和2年度は、本科研5年計画の4年目にあたる。研究工程でみると、Phase1「能力向上の教育モジュールを作成評価,外国人ケアパス,ガイドラインの開発」、Phase2「臨床活用による患者アウトカムをターゲットとしたガイドラインの臨床評価研究」、Phase3「2021年には再度看護職のカルチュラル・コンピテンスを測定し結果評価」において、Phase2~Phase3を含む時期にあたる。
 本年度は計画通り、看護国際化ガイドラインの開発と臨床評価、教育モジュールの精錬をすすめた。多文化対応能力研修を全国規模で継続し、前倒しで看護職のカルチュラル・コンピテンスの測定を実施した。ドイツのシャリテ医科大学ベルリンの多文化対応プログラム(IPIKA)との協働も発展させ、Covid-19感染症の世界的蔓延の対応として、Webinarで研修を定期的に4回実施した(参加者延べ450名)。特にドイツ看護師との事例検討および病院におけるガイドラインについて国際的に検討した。引き続き外国人患者の日本での受診および入院体験の聞き取り(質的データ)研究と、ICS(Individualized Care Scale)を用いた日本に滞在する外国人から見た日本の病院の看護の質評価(量的データ)研究、看護基礎教育(看護学生)向けの「看護英語ノート」を完成し、研究成果は、国内学会、国際学会での論文発表を行った。
 2020年はナイチンゲール生誕200年を記念して国際的にナイチンゲールチャレンジで次世代を担う若手看護職支援が展開されており、本研究プロジェクトは日本からの最初の登録として先鞭をつけた。本研究により、関心のある看護師個人の能力を高めるだけでなく、病院や組織のシステム変革のための看護管理の視点から看護国際化ガイドラインの開発を推進する意義は大きい。研究実績を含むコンテンツ報告書(1-134P)を作成した。




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外側はGlobeのGを示すとともに、それぞれの違いを受け入れる余裕のある不完全な丸としてインクルージョンを意味します。

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