ウェビナーの心得(第6回)

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2020/07/04

クオリティの高いWebセミナーを開催する


 現在、世界的な動きをみても、web開催する学会も多くなってきています。単なる一方向の動画配信だけでなく、通常開催と同様の、さらには今までのものを超え、別のクオリティの可能性を秘めたツールにもなりつつあります。私たち研究班やメンバーの経験もふまえ、講演会や学会をweb開催する主催者側の運用について、クオリティを高く進める方法をお伝えしたいと思います。

1. webセミナー(ウェビナー)ならではの特徴

 webセミナーから派生した造語「ウェビナー」のメリットは、前回お伝えしましたとおり、上限なく多くの人々を参集することが可能であり、参加者も、地理的条件に関わらず、インターネット回線のみで地球のどこからでも参加することができます。
 オンライン授業での学生からの声でも漏れ聞きますが、実際の授業よりも集中できるそうです。多くの学生が声にするのは、「見られている」と思うからだそうです。実際の教室では、周りに他の学生がおり、教員や他の学生の目が自分に向けられると思うことは、指名されたりしない限り、ほとんどないでしょう。講師から「見られている」と思うこと、それは逆に考えれば、講師が「私のために」話してくれている、と受け止める、と解釈することもできます。自分だけに向かって話してくれる、と思え、また、自分が参加している場所の周りに人がいないため、集中できるようです。
 そのような参加者の思いを、主催者側は理解し、「あなたに」伝えている、という姿勢が、ウェビナーをさらに快適なものにすることができるのではないでしょうか。

2. 開場時刻から既に始まっているウェビナー

 ウェビナーでは、参加者が自由に参加してくるため、ある程度の待ち時間を設定しておくことが、主催者側の運用として必要です。13時開始といって、12時55分にウェビナーを開場するのは、あまりにも余裕がないと言わざるを得ないでしょう。参加者が、インターネット回線の事情などにより、則入場できない可能性もあります。開始まで時間がほとんどないと、参加者を慌てさせ、結局、遅れて入ることになるため、参加者の満足度を低下させる原因にもなります。ウェビナーへの参加人数にもよりますが、少なくとも15~20分前には開場することが、快適なウェビナーの基本といえるでしょう。
 では、開場してから開始まで何をすればいいのでしょうか。それは、主催者側の運用次第です。ただ、真っ黒な画面でぼーっと待たせるのか、この時間を使って何かをするのか、です。企業主催のセミナーでしたら、この待ち時間に企業PRなどを流すでしょう。学会やセミナーなどでしたら、その日のプログラムや、ウェビナーの操作方法などについて、スライドショーのアプリを使用し、自動送りにして、リピートで流すと、参加者も安心でき、待ち時間も退屈することなく、過ごすことができます。もちろん、担当者がライブで、それらを説明することも良いと思いますが、途中で参加した方が、「遅れた」と思ってしまうかもしれませんので、ある程度、リピートで流せる内容が良いと思います。
 待ち時間を有効活用できるよう、運用を工夫することが、参加者のスムーズな参加にもつながり、開場時刻から既にウェビナーが始まっている、という認識を主催者側が持つことが、成功へのポイントの1つと言えそうです。
 

3. クオリティの高いウェビナーへ~主催者側から講演者へお願いしておくこと

 ウェビナーの主催者側は、事前に講演者へお願いしておくポイントがいくつかあります。テレビ局をイメージしていただけると分かりやすいと思いますが、クオリティの高い内容にすることが、ウェビナーを各段に良くします。
 まず、参加者とのコミュニケーションが最も大事です。ウェビナーでは、参加者は顔も声も出ないため、テレビの「視聴者」と同じようなものです。参加者は、講演中に反応を返すことが難しく、講演者自身も、参加者が大きくうなづいたり、笑ったり、難しい表情をするなどの反応がつかめない中で、講演を進めていかなければなりません。無観客会場で行う講演と同じですので、講演者が最初は戸惑うかもしれません。講演の最中に、参加者と積極的にコミュニケーションを図ることができるような運用の工夫をし、講演者側から積極的に働きかけていくと良いと思われます。
 例えば「Zoomウェビナー」でしたら、参加者から書き込める「Q&A」の機能がありますので、講演中は常に参加者からの意見を受け付けておき、講演者はそれを見て、講演中にも回答しながら進めるとスムーズです。むしろ、実際の開催では、講演中に参加者が感想や意見を伝えることは、講演を止めてしまうことになるため、なかなか勇気のいることです。しかし、ウェビナーでは「Q&A」の機能を使えば、テキスト・データで送ることができ、講演中にその感想や意見を取り入れてもらえたら、これほど参加者にとって嬉しいことはないでしょう。
 また、「投票」機能というものも、「Zoomウェビナー」にはあります。あらかじめ設定しておく必要はありますが、講演の冒頭に、アイスブレイクとして使うものから、講演のテーマについて意見を聴くもの・講演の最後に感想を聞くものまで、いろいろな使い方ができます。選択肢を設けての質問形式となりますが、択一でも複数でも設定が可能です。ウェビナー参加が初めて、という方が多いセミナーなどでしたら、アイスブレイクとして「今日は朝食を召し上がりましたか?」という質問でも良いと思います。そして、その結果は、すぐに表示され、参加者と画面共有することができます。これを機に、講演をさらに進めることができれば、参加者が参加していると実感する、一体感のあるウェビナーになるでしょう。

 ウェビナーを開催する方法は、web会議アプリの普及が進んでいる現在、それほど難しいことではありません。しかし、ウェビナーは、セミナーや講演会、学会など、多くの人が参加するものに活用され、また学習の機会にもなり得ますので、ただ開催するだけではなく、そのクオリティが求められているとも言えます。主催者・講演者ともに、参加者の気持ちになって準備を進め、開場時刻から既にウェビナーが始まっていると心得、ウェビナーの間も常に参加者とのコミュニケーションを大切にしていく姿勢を忘れずに取り組むことが、クオリティの高いウェビナーとなり、参加者の満足度も上げることにつながりそうです。


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