ウェビナーの心得(第7回)

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2020/07/11

新たな活動の創造が秘められたWebセミナーの活用


 現在、ますますweb会議アプリの世界は、Zoom社のアプリの利用者が急増したことを契機に、次々と刷新されたアプリが台頭し、激戦の様相を呈してきました。
 私たち研究班やメンバーも、今後、さらにwebアプリを活用する機会が増え、参加者としてではなく、主催者としての活動も広がりそうです。今回は、「ウェビナーの心得」の最終回として、これからの社会において、新たな活動を創り上げることができるwebセミナーの活用について、お伝えしたいと思います。

1. 既成概念を捨てる勇気を持つ

 webセミナーから派生した造語「ウェビナー」のメリットは、前回お伝えしましたとおり、インターネット回線さえあれば、参加者も主催者も、地理的条件に影響されずに開催・参加できることです。新型コロナウィルス感染症によって、余儀なく在宅勤務をすることになった私たちですが、これを機に、通常業務の基本を在宅勤務に切替える企業も出てきました。今まで大きなオフィスを借りていたことを見直し、小さな事務所に切り替える、あるいはオフィス自体をなくし、必要時はスポットで借りる、という企業もあるようです。在宅勤務を導入することで、働き方やオフィスの在り方まで、その概念が変わりつつあることを感じます。
 地理的条件に影響されない、というメリットがあるwebミーティングやウェビナーが、こういった概念の変化に適合した、と思われます。
 では、そういったwebアプリを活用し、会議やセミナーをどのように企画するとよいのでしょうか。この時、注意したいのは、つい、今までの感覚で、今までやってきた仕事の進め方やセミナーの方法を、そのまま踏襲しがちということです。今まで集合型で開催していた方法を、そのまま、やろうとすると、限界もあり、実際の開催ではできなかった方法すらできなくなってしまい、開催そのものに無理がかかってしまいます。webアプリは、私たちの活動を実現するための「ツール」ですので、それをどう使うかは、人間側次第です。そのツールで何ができるのかを理解し、自分たちがやりたいと思っている活動を、新たに創り上げていく方が、可能性がずっと広がります。つまり、今まで実際にやってきた集合型セミナーの方法に関する既成概念を、思い切って捨ててしまう勇気を持つことが、新たな「ツール」をスムーズに使うコツといえそうです。
 webミーティングやウェビナーの主催者になった時、どのように企画をするのかが、成功するかどうかの重要なポイントであると言えます。web開催であろうが、実際の開催であろうが、開催するのは、人間であるということを忘れないようにしたいものです。

2. ウェビナーの成功は準備から

 前回お伝えしましたように、ウェビナーでは参加者が入場する開場時刻から既に始まっています。ウェビナーの間も常に参加者とのコミュニケーションを大切にしていく姿勢を忘れずに取り組むだけでなく、まずは、ウェビナーでお願いをしている講演者とのコミュニケーションを、準備の段階から大切にすることが重要でしょう。講演者が安心して、自分の講演ができるよう、講演者の思いを受け止め、察して温かいサポートをするのも、主催者として大切な役割ではないでしょうか。
 その1つとして、講演者との事前打ち合わせは、非常に重要なものになります。Webミーティング・アプリを使った勉強会でも、新しい「ツール」に不安を持つ参加者が多いため、事前に練習会を数回重ねて、本番に臨み、成功した、という例もあります。多数の参加者がいるウェビナーであれば、なおさらのことでしょう。そのため、事前打ち合わせは、事前リハーサルとして位置付けるとよいでしょう。
 事前リハーサルの目的は、2点あります。1つは、回線状況と使用機器の確認です。事前リハーサルでは、講演者には、本番当日と全く同じ環境で参加することを依頼します。インターネット回線の接続状況と使用機器などの不具合について、すぐに確認することができるからです。上手くいかなかった場合は、その場で、主催者と対策を相談することもできます。もしかしたら、パソコンやアプリの設定1つで解決することも多々あります。その対応さえ分かっていれば、当日、万が一、同じ現象が起きたとしても、講演者も慌てることなく対応することができます。最も多い不具合の1つは、AV関係です。カメラがつながらない(映らない)・マイクの音が出ない、というトラブルが多いようです。本番当日にそのようなことが起きると、本当に慌ててしまいます。後から聞くと、その日だけ、事前リハーサルでは試さなかった新しいパソコンを使った、とか、別の部屋で接続した、ということが多いようです。事前リハーサルでは、必ず、本番当日と全く同じ環境・状況で行うことが最も重要です。そして、主催者側は、できれば、本番当日と同じ曜日・時間帯で行うという設定をすると良いでしょう。インターネット回線は、接続者側の状況もありますが、回線の混雑状況も関係しますので、実際に確認するためにも、なるべく本番当日に最も近い状態で行い、作動を確認するのが重要です。
 事前リハーサルの目的の2つ目として、進め方や内容の確認があります。これは、実際のセミナーと同じです。ですが、ウェビナーの場合は、ここにパソコン(など使用機器)の操作確認が加わります。スライドがちゃんと映るのか、スライド送りはスムーズか、複数の講演者がいる場合は、講演者の入れ替えや画面への登場(登壇)はどのようにするのか、という順序や操作者・操作方法の確認が必要となります。講演者の多くは、実際のセミナーでも講演していますので、スライド送りのパソコン操作は慣れています。ウェビナーの場合は、ここに「画面共有」(参加者全員が画面で見る機能)という操作が加わりますので、共有できるまでに、どのような指示画面が出るのか、一度、体験しておくことが大事です。主催者や講演者が、操作に戸惑うその数秒間という時間は、参加者には「もたもたしている」と映ってしまいます。特に、スライド作成ソフトでのスライドショー機能では、デュアルディスプレイや発表者原稿の機能など自動起動設定がされていると、上手く映らない、あるいは、映したくない発表者原稿が参加者に見えてしまう、ということも起きます。そういう現象は、事前に確認できますので、是非、リハーサルをすることをお勧めします。

3. 魅せるウェビナーへ

 事前リハーサルで確認することは重要ですが、どのように参加者へ映るのかも、確認しておくと、魅せるウェビナーになります。ウェビナーは視覚情報が最も多いですので、「映り方」を意識し、よりクオリティの高いものを作るようにしましょう。
 魅せる「映り方」で最も重要なのは、カメラ映りと思われがちですが、実は、最も重要なのは、「音」だと言われています。ウェビナーでは、参加者は自分の顔が出ないため、自由な形で参加します。何か用事をしながらかもしれません。常に画面を見ているとは限らず、それでも常に入るのは「音」なのです。講演者は、周囲の音を拾わない指向性という機能のあるマイクを使った方が、講演者の声をクリアに流すことができます。ハウリングを起こさないことも重要ですので、ヘッドセットを使うのがお勧めです。また、マイクの機能だけではなく、講演者自身の話し方も重要です。ウェビナーでは、自分が話してから、参加者に届くまでには、若干のタイムラグがあります。それをふまえ、実際のセミナーや会話よりも、心持ち、ゆっくり話した方が、参加者にはクリアに聞こえます。早口で話してしまうと、音声が途切れたり、うまく流れないといった現象も発生しますので、1文節ごとに区切るようなつもりでゆっくり話していただくよう、主催者は、講演者にお願いしておくとよいでしょう。
 次に、「映り方」で重要なのが、カメラ映りです。パソコン付属のカメラは、カメラの仕様としては解像度があまり高くないため、ウェビナーで参加者の画面にアップで映ってしまうと、見るに耐えないくらいのボヤけた画像になることも多いようです。講演者には、カメラの解像度を確認してもらうよう、主催者はお願いし、事前リハーサルで解像度を実際に確認する必要があります。もし、解像度が低い場合、解像度の高いwebカメラを主催者側からお貸しすることも考える必要があるでしょう。
 次に、「映り方」として大事なのは、画面に映る位置です。パソコンのどこにカメラがあるかによって、映り方が変わります。画面の上にカメラがある場合は、参加者には下を向いているうつむいた顔になり、画面の下にカメラがある場合は、上を向いている見上げた顔になります。講演者の視線は、自分のパソコンの画面に向きますので、取り付けられているwebカメラの方を見ることはなく、参加者と視線が合わない、という印象を与えてしまいます。webカメラを見る時、参加者を見上げるか、見下げるか、という映り方を考えると、見下げる方向は避けた方がよいでしょう。そのため、カメラはできるだけ、講演者の視線よりもやや上に位置させる方が良いようです。合わせて、講演者の顔が画面いっぱいに拡大されないよう、できれば、胸から上が画面の真ん中付近に映るよう、カメラまたはパソコンの位置を事前に調整しておきましょう。
 もう1点付け加えますと、カメラが下にあると、講演者の下から見上げる映像を参加者に見せてしまうことになります。この場合、パソコンモニタの光が顔にあたり、その光で影を作ってしまいます。顔のしわも目立ってしまいますので、カメラの位置と顔への光の当たり方は、男女を問わず、事前リハーサルで確認すると良いでしょう。

 ウェビナーを成功させるためには、実際のセミナーをそのまま移行させるという既成概念を捨て、新たなものを創るという意識が重要だと思います。実際のセミナーではできない機能も、ウェビナーではたくさん備えていますので、それらを活用すれば、今までにはなかった新たなタイプのセミナーを開催することができるでしょう。このように、今までとは異なる新たな活動を創造する可能性を秘めています。地域や組織限定で開催していたセミナーから、世界中の方を参加者にするウェビナー開催も可能になるのです。
 先日、マイクロソフト社が、web会議アプリ「Teams」の中で、バーチャル画面に集まることができる新しい機能を発表しました。

Web会議「Microsoft Teams」にバーチャルルームに集まれる「Togetherモード」(2020年7月9日)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2007/09/news053.html

 現実空間での視覚情報は、仮想空間で再現できますので、このような新機能を聞くと、ますますweb会議アプリやウェビナーの可能性への期待が高まるのではないでしょうか。
 参加者が、まるでそこにいるような感覚で参加できることが、ウェビナーの参加者の高い満足度につながるものと思います。「Togetherモード」のような新機能で、これからのウェビナーやweb会議アプリは、さらに熾烈な競争となりそうな予感がし、私たち利用者にはとても楽しみな動きです。
 このような新たなweb機能を活用したウェビナー開催ですが、その機能を最大限に引き出し、どうウェビナーを構成し、運用するのか、それを決めるのは、やはり、私たち人間である、ということを忘れずに、次世代のウェビナー開催へチャレンジし続けたいものです。



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