常に看護の「延長線上」に

看護学部6期生 髙橋あづさ

私は1980年(昭和55年)に千葉大学看護学部に入学した。当時の看護学部は創立6年め、私たち6期生の入学でようやく学部の1年生から大学院の2年生までフルメンバーが揃った千葉大学で一番新しい学部であった。しかし、創立にあたり各方面から選りすぐられた教官たちはそれぞれに個性豊かであり魅力的で、私は看護学の世界にぐいぐいと引きずり込まれていった。就職も迷うことなく病棟看護婦を選択した。
ところが、20代最後の年に税理士を目指すことを決め、現在は税理士として独立開業し15年めに入ったところである。これは看護学部の卒業生としては、やや(?)異色だということで今回この原稿を書かせていただくことになった。確かに「看護婦から税理士に!?それは、ものすごい『方向転換』ですね」といわれることは多い。しかし、当の本人にとっては実は「方向転換」ではなく、寧ろ看護学部での学びの「延長線上」に今の仕事があり、実際の仕事の内容も看護のそれと同じだと考えている。
学生時代に「看護とは患者の生命力の消耗を最小にするようすべてを整えること」と学んだが、現在私が日々目指していることも、「企業がそのミッションを存分に果たすことができるように(企業もただ存在するだけでは生命力はどんどん消耗する)、全てを整える」ということである。その視点は看護のそれと同じであり、自分としては看護の延長線上に今もいるつもりである。
無論そうはいっても、文字通りの「看護の現場」でキャリアを積み重ねている同窓生をみて「友がみな我よりえらく見ゆる日よ」ということもなくはない。
ただ、そのようなときに思い出し、励まされるのは「君達が将来、直接看護の仕事に携わらなかったとしても、ここで学んだことを基礎にそれぞれの道を究めるのであれば、それは立派な『看護(学)』なのだ。看護の世界はそれを許容できるだけの力を持ってこそ本物だ」と繰り返し語ってくれた当時の教官たちの言葉である。
もしかすると、その言葉は時の経過と共に自分に都合よく記憶が書き換えられているのかもしれないが、いずれにしてもこのような総合大学らしい懐深い千葉大学で学ぶことができた日々に心から感謝している。


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