客員教授 ペリ・ジェーン・ボマー先生をご紹介いたします。
先生には現在千葉大学客員教授として、看護学研究科において、博士前期課程の学生に「Family Nursing」を、博士後期課程の学生に「Community based nursing research」を、そして、CNS強化コースの学生には「Advanced Nursing」をご講義いただいています。Learning Circle を用いた教授法で、各クラスとも毎回熱心な講義が展開されています。


ご略歴
1970年 |
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米国オハイオ州立アクロン大学看護学部卒業 |
1972年 |
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米国オハイオ州 ケース・ウェスタン・リバース大学 |
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フランシス ペイン ボールトン看護学部 修士課程修了 |
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看護学修士 専攻 母性看護学 |
1982年 |
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米国オハイオ州立アクロン大学にて |
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Ph.D(Family Ecology and Educ. Administration) 取得 |
1983年 |
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サンディエゴ大学フィリップ Y.ハーン看護学部 家族看護学教授 |
1994年 |
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イーストカロライナ大学母子看護学教授 |
1996年 |
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ノースカロライナ州立大学ウィルミントン校看護学部教授 |
2001年 |
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ノースカロライナ州立大学ウィルミントン校看護学部研究副学部長 |
2008年 |
4月 |
千葉大学看護学部客員教授 |
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6月 |
ノースカロライナ州立大学ウィルミントン校看護学部名誉教授 |
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主な受賞歴など
1972年 |
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シグマ・セタ・タウ国際看護学会 |
2004年 |
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Family Nursing Scholar Award 受賞 |
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主な著書等
Bomar,P.J.(2004) Promoting Health in Family(3rd ed.) :Saunders.
この本は、AJNのEditor and author Awardを受賞しています。また、米国だけでなく、日本、ブラジル、カナダ、イギリスの修士課程、博士課程で使用されています。

なぜ Family Nursing に興味をもたれたのですか?
30数年前、アクロン大学に大学院修士課程を作る時には、まだ Family Nursingのコースはありませんでした。全米でも2か所しかFamily Nursingのコースはなく、教える人がいなかったためです。私は母性看護を専攻していましたが、Health Promotion に興味があったこと、そして、あらゆる年代の人を対象にできることから、Family Nursingの担当に名乗りを挙げました。小児看護、成人看護の教授たちと協力して、コースを開設しました。
先生がお書きになった本について教えてください。
教授陣で、「教科書が無い」と困っていたところ、出版社から「先生がお書きになったらどうですか?」と提案がありました。最初は「えーっ」と思いましたが、本の内容や骨子を決めると、それぞれの原稿を書く適任者を、出版社がアメリカ、カナダから探してくれて、今では、第3版を出版するに至ります。この本の中でFamily Nutritionについて書いてくれたのは、私の最初のFamily Nursingクラスの大学院生です。彼女は、Nutritionの専門家でした。授業を進めて行く中で、彼女は家族の中におけるNutritionの重要性に気付いて、それを、自分の研究テーマにしたんですよ。
日本語翻訳版を出されるご予定は?
計画はしています。ただ、翻訳するだけではなく、日本の家族についても、盛り込みたいですし、内容も日本の家族の現状にフィットするようなものにしたいので、
もう少し時間がかかると思います。
最後に日本の専門看護師にメッセージをお願いします。
Research supports that families are where health promotion and disease prevention is taught, supported or undermined. Therefore, Clinical Nurse Specialists of Japan are encouraged to include families in all aspect of nursing care for individuals, families and communities beginning with assessment of the problem or issue and ending with evaluation of the intervention.
(2008年6月)

「専門看護師のための最新病態学」の講師、井上泰先生をご紹介します

日本病理学会評議員、日本病理学会認定病理医、日本超音波医学会認定専門医、日本臨床細胞学会認定細胞診専門医。医学博士(東京大学)。
著書:『ナース・研修医・コメディカルのための なぜ? がなるほど! 病態生理絵解きゼミナール』メディカ出版、2008
『学生のための疾病論 人間が病気になるということ』医学書院、2001
『これだけは知っておきたい疾病の成り立ち』医学書院、2000
『超音波消化器病学』南江堂(共著)、1996
『在宅ケアーへのアプローチ 訪問看護の確立をめざして』医学書院(共著)、1988

難解な病態をわかりやすく講義してくださいまして、ありがとうございました。ご苦心された点等お聞かせください。
井上 苦心というより気をつけている点は、現場のリアリティを絡めて病態を説明することです。何が起こるか分からないのが医療の現場ですから、自分の思い通りにならない状況下で迅速に判断する対応が必要となります。だから、どのような状況でも自らがパニックにならないための知識の習得と学習が重要だと考えています。もうひとつは、自分が伝えたいことをなんとか学び手に理解して欲しいという思いです。そのために、言語化出来ない部分を補完する絵を描いています。これは意図的な絵ですから、芸術家が描く趣のある絵とは違います。出来る限り解剖学にのっとった正確な人体の構造の絵にこだわります。
絵が、大変に素晴らしいです。
井上 素晴らしいと言っていただいて恐縮です。私の描くものは単純な二次元の絵でして、余分なことを一切省いたものです。
伝えたいことに忠実に描いているということですね。
井上 忠実と言うわけではありませんが・・・。主題は一つ、この絵を見た人が、私自身が意図する方向で了解してくれるかです。そういう意味で、写真ではなく単純な絵にはこだわります。
『なぜがなるほど病態生理ゼミナール』の三年間連載で出版社との連絡調整を、熱心にされたと聞いています。
井上 月刊誌では、通常1回あたりせいぜい4ページのところを、6ページに拡大して連載しました。絵も描いているので、どうしてもページ数が足りなくなります。出版社のスタッフも工夫してくれました。
私のテキストは、看護師向けの通常のテキストよりもかなりレベルが高く、深い内容になっています。病態生理を含む基礎科学の教育において、医師が学ぶことと看護師が学ぶことに差があってはならないと考えているからです。だから、「これは看護師は知らなくていい」というような配慮はしません。安直でわかったような気になる知識は、医療現場で使い物になりません。
定着した専門知識をもち、あくまでも患者の立場に立つ、患者が危険な方向に向かいそうなら、厳しく諫める。そのような看護師が一人でも多く育って欲しいと念じています。この思いがなければ、このような教科書を書くこともなく、看護教育に関与することはなかったでしょう。
最後に、専門看護師に期待することをお聞かせください。
井上 先ほど述べたことと重なりますが、あくまでも病める人の立場にたった知識と理論を持ち、手技を身につけ、発言や行動ができることを期待します。
医療という場が、はからずも病気を担ってしまった一人の人間との対峙から始まるという当たり前の事実を忘れないこと。そして、その医療と看護が、医師・看護師・パラメディカルといった複数のスタッフの行動から構築されていることを認識すること。その基盤に立ち、看護師という専門領域に矜持をもち、患者にとって、時として理不尽と思われる言動をした医師やパラメディカルスタッフに遭遇したとき、即座に、毅然とした態度がとれる専門看護師になられんことを。
病める人間を支援できる技術論(テクノロジー)がしっかりしていれば、人間のコミュニケーションを醸し出すヒューマニズムは、自ずと後からついてくるものです。
貴重なお話しを、ありがとうございました。
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講義の様子 |
(2008年5月)

「専門看護師強化コース」が始まりました
平成20年度4月より「専門看護師強化コース」が開始されました。本年度はコース生2名、科目履修生2名が入学し、4月から現在までに「専門看護師のための最新薬理学」「専門看護師のための最新病態学」そして、客員教授Dr.Bomarによる「Advanced Clinical Nurse Specialists」を受講しています。8月にUCLA Medical Centerで行なうCNS研修を前に、ネイティブ講師による語学研修も開始されています。
本年度は、試行錯誤の運営になると思いますが、本コースの目的と照らしながら夢と熱意をもって取組んでいきたいと思います。(プロジェクトリーダー 中村伸枝)
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4月の受講開始を前にコースの学生、教員とで、茶話会を開きました。 |
(2008年4月)
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