語りの広場

エンド・オブ・ライフケア講座担当教員が語る

なぜ今、エンド・オブ・ライフケアという考えが注目されているのか
―社会情勢は? 医療政策は?

櫻井 智穂子
櫻井 智穂子
千葉大学大学院看護学研究科 エンド・オブ・ライフケア看護学講座 特任講師。「終末期の緩和を目的とした療養についての患者と家族の決断を支える看護援助に関する研究」を研究テーマとして、病気の終末期にある患者とその家族が、自ら決断した療養方法で残りの人生をできる限り有意義に過ごしていけるための有用な支援方法を明示することを目的にした研究を続けている。
和泉先生 エンド・オブ・ライフケア看護学講座が2011年に開講されているんですけれど、何故今エンド・オブ・ライフケアという考えが注目されていると思いますか。

長江先生 そうですね。やはりまず一つには高齢化とそれに伴う医療費の増大を解決するために病院機能の分化というような医療政策の背景があると思うんですね。

医療政策としてここ10年間医療制度改革の中で言われてきた、一般病床数の固定化と療養病床群を減らして施設ケア、あるいは地域一体型の小規模な多機能施設を作って地域ベースドに変えていこうというふうに、ヘルスケアシステム自体を病院中心型から地域包括型へ移行しようとしているということがされてきて、なかなかシステム移行がうまくいかないということがあって、人口動態とか今後の見通しのところで多様な看取りの場が必要になってきて、病院では死ねないということが近いうちくることがまざまざと数字で見せつけられてきているので、だから在宅ケアをどうしようかだとか対策に走りつつあるっていうところがあるので…抜本的な改革がないままに姑息的な対応をしているところがあるのだけど、そういった一つは将来を見越した人口動態の変化、多様な看取りの場の必要性とかそういうものが政策的にもかなり早いスパンで必要になってきているのが一つの背景になっていると思います。

和泉先生 私の印象としては、そういう政府の対応とかが出されているんですが、それが細切れで出されているという印象があって、高齢少子化社会の問題として対応しているところもあるし、医療コストの高騰っていうところで対応している部分もあるんだけれど、それらがうまく連動していない印象があって、なぜ今エンド・オブ・ライフケアが大事だというふうに私たちが考えるのかというと、それらをつなぎ合わせて連動させる形で社会変革を試みていく上では、高齢化社会の問題としてだけ見るのではなく、なおかつ医療コストあるいは医療のシステムの問題としてだけ見るのではなく、それらを連動した社会全体の、良い生を生きて社会の市民が年齢とか病状とかに関わりなく、市民が良く生きて良く死んでいくことができる社会というもう少し大きな目で見てその辺のポツポツ出ている色々な政策をうまく連動させる大きな視点が必要なのかなと思っていて、それをつなげるのがエンド・オブ・ライフケアなのではないかと思います。だから今非常に求められているのではないかなというふうに思いますけどね。