語りの広場

エンド・オブ・ライフケア講座担当教員が語る

エンド・オブ・ライフケアにおける看護師教育
―要請される看護師は? 看護師の役割は?

長江先生 その中でキーになるのは看護職というのが一つはあるんじゃないかしら。そのつなぐ役割は正道的なものが当然ベースとして必要なんだけど、生活と医療の部分を統合していくそういった力をナースが持っていると信じています。

ナースがつなぎ目となって働いていく要請があって、福祉職でもない、医師でもない、そういうところを両方つなぐところに看護という多機能の…それがいろいろできるのが看護の専門性だと思いますし、その人の生活に医療を組み立てていく能力が看護師にはあってそこに看護学として新しい社会的使命というのがあるんじゃないかなと思ったりしています。非常に壮大というか、野望というか…社会変革だと言っているところではあるので…確かに縦割り社会のつぎはぎだらけの医療政策をこれまで作ってきたところがあって、病院信仰、病院中心の医療はもう終わりだと言っている経済学者も多くいて、穴ぼこだらけの政策というか、日本の政策は問題対応型なんですね。何か起きるとつぎはぎだらけなので…ホールじゃないので…。

その中でイギリスとかカナダとかの考え方をトップダウンで政策的にも全体をみてやっているところのヘルスシステムリフォーム政策っていうんですか、強大な国家的な権力って凄いなと思って、なぜ日本はできないんだろうかと思って…それが日本なんですよね。そう簡単にはできないと思うんですが…でもこのことが皆が求めていることだっていうのは抜本的な解決はないんだけれど、非常に必要なことだと感じていますね。

櫻井先生 私も先生方がおっしゃることと同じような意見を持っているんですけど、3月の講演会の質疑応答の時に「看護師さんにそんなに負担というか…役割ばかり期待していいんですか」と指摘された時に、それもそうだなとは思ったんですけど、やっぱり私は看護師が一番柔軟性があっていろんな物の見方ができて、いろんなことを知っていて…自画自賛かもしれないんですけど専門職者の中で一番いろんな職種の方たち、立場の方たちとコミュニケートすることが得意な性質を持っていると自負していますので、できれば看護師の活躍の場があるといいのかなと思っています。

この前イギリスに行かせていただいたんですけど、たとえば緩和ケアというところだけでもいろんなスペシャリストが育成されていて、それぞれの役割が機能別に働いていて、地域で生活する終末期の疾患のある患者さんの緩和ケアというものを充実させていく努力をしていることを知りました。そのように看護職者の中でも得意とすること、専門性を伸ばすような教育をしていく必要性があると思います。

長江先生 看護師が適任であるという点に関しては自画自賛かなというところがあったんですが…やっぱりイギリスの緩和ケアが素晴らしいのは緩和医療のスペシャリストを育成する教育の仕組みを持っているということだと思うんですね。

私たちのもう一つ大事な点は、今、櫻井先生がいってくださったように看護師の人材育成というところに講座としての大きな使命があると思います。というのは、確かに看護師にはそういう力があると思うのですが、なかなかそういう教育をこれまで基礎教育の中でされてこなかったというのが一つあるんですね。

例えば、在宅看護という領域がでてきたのがここ十数年前のカリキュラムからですし、以前から継続看護というのは教えられてはいたんですけど臨床看護、つまり病院の看護中心に教育がなされてきているということが一つあって、今働いている人たちにいろんな人たちとコミュニケーションをとってコーディネートしていく力というのは実はまだまだ不足しています。コミュニティベースのナーシングというところにシフトしていけるようなナースの教育というものが基礎教育と継続教育の中に必要で、なおかつスペシャリストとしてもっとスーパーバイズしたりリーダーシップをとったりマネージングしていくようなスペシャリストの養成というのが必要になってくると思うんですね。

現在がんの専門看護師ですとか認定看護師とか様々な領域のナースのスペシャリストが生まれてきてるんですけど、やはりエンド・オブ・ライフケアを実践できるナースの力として、もう少し実践能力のレベルと役割や成果など整理して、そういった教育を受けたナースたちが効果的に働きができるように実践モデルや教育システムを提示できるといいなと思います。次の話題に移ってしまいましたけど…。

和泉先生 それに付け加えるとしたら確かに看護師の人たちにどんどんこの領域においてリーダーシップをとっていただきたいと思いますし、リーダーシップをとれる看護師を養成していくことが重要なことだと思います。