千葉大学看護学部入学から今日まで

看護学部13期生 増島麻里子(成人看護学教育研究分野 准教授)

増島麻里子先生 写真

―先生が看護の道に進まれたきっかけは?
増島 私が中学生のときに、ホスピスができたという報道を見たのが最初です。それまで、私にとって死は常に怖いものでした。けれども、ホスピスという施設を通して、穏やかに死を迎えられる、ということを知ったのです。それで緩和ケアやがん看護に携わりたいと思うようになりました。

―千葉大学を選択した理由は?
増島 大学以外で看護を学ぶ選択肢もありましたが、大学で学ぶ「看護学」という学問とは何だろうかと、未知の学びへの魅力を強く感じました。当時看護系の大学は10校くらいしかなくて。地元である東京から通えるのは日赤か千葉大しかなかったんです。どちらも魅力的でしたが総合大学であるということに惹かれて千葉大学の門を叩きました。

増島麻里子先生 写真

―実際に入学してからはいかがでしたか?
増島 一年生のときの教養の授業で、まず総合力を感じました。それぞれ専門の領域の先生による教養科目の授業なので、非常に深みがあって面白かったんです。生物や物理の実験では他学部の学生と自然に交流することとなり、自分にはないさまざまな考えを肌で感じることができました。

―サークル活動なども活発にされていたのですか?
増島 西千葉キャンパスで活動していたESSに入りました。夏にはテニスもやるよ、なんて売り込みに釣られたのですが、結局テニスはやらなかった(笑)。でも、海外に興味を持って1年生の春休みには1ヶ月間の渡米もでき、医療系ではない友人がたくさんできたのでとても良かったと思います。

―自分の専門分野以外の友人ができるというのは総合大学ならではですね。
増島 サークルの友人とは、頻繁ではないものの今でも交流があります。仕事で悩んだときなど、医療系の友人と話すといろんなことがあうんの呼吸でわかるのでそれもありがたいのですが、他学部の友人の場合は、患者さんや患者さんの家族のような反応に近く、それも新鮮で私に気づきを与えてくれます。勉強になりますね。

恩師の佐藤禮子先生と写真恩師の佐藤禮子先生と

―授業で一番印象に残っているのは?
増島 基礎看護学と成人看護学です。千葉大学の教員は信念を持って授業をされる先生が多く、たくさんの感動や感銘を受けました。中でも佐藤禮子先生(千葉大学名誉教授、現・関西国際大学副学長、保健医療学部長)が「看護は実践の科学です」とおっしゃられた時のはっとした感覚は今でも覚えています。「医療行為」を行いながら、一人ひとり背景も個性も違う「人」に関わるという、看護の本質を突いたお言葉だったと思います。

―その後はがんの専門病院で臨床現場にいらしたのですね。大学院に入ったきっかけは?
増島 6年間臨床にいて、ある程度ひと通りのことを経験し、後輩を指導する立場にもなりました。一方で、さまざまな患者さんを看るうちに、当時の自分の知識だけでは足りない気がして、もっと学びを深めたいという気持ちも芽生えてきたのです。それで、学部生のときにもお世話になった佐藤先生の元で研究を深めるべく、大学院に入学しました。

大学院修了式 写真大学院修了式

―大学と大学院での大きな違いは?
増島 学士のときにも一応研究はしましたが、修士は自分から学び取っていかないと何も得られない、という点で姿勢そのものからして違いましたね。幸いにして同じがん看護の分野で7人の同期生と共に学ぶことができ、さらに年代も20代~40代までと幅広かったのも良かったです。子育てと両立しながら研究している人もいて、大きな刺激になりました。

実習指導 写真実習指導

―教育の道を歩まれた理由は?
増島 もともと、臨床を深めるために大学院に来たこともあって、教員になることに多少の迷いもありました。でも、がん看護の第一人者である佐藤先生の元で教育研究者として歩む機会に恵まれ、自分の進路を決めることができました。実際には助手として実習を指導しますので1年の半分くらいは臨床現場に近いところで仕事をすることが多く、現場と研究の両方を追いかけることができました。結果的にこの道を選んでよかったと思っています。

―そして今は准教授ですね。
増島 助手のときのように臨床の場に出向く実習指導はしていませんが、現場から離れすぎないように注意をしています。今の私であれば、研究の一環として患者さんにインタビューしたり、ファカルティ・デベロップメントで現場に立ったり。もちろん、最新の医療誌には常に目を通しています。また、千葉大学は病院がすぐ近くにあるというのも大きなメリットですね。自分自身の動き方、考え方でいくらでもチャンスを作り出すことができると思います。

スウェーデン研究出張 写真スウェーデン研究出張

―先生の今の研究は?
増島 がん治療や疾患に伴うリンパ浮腫、がん患者と家族のサポートグループ、エンドオブライフケアについて、が主なテーマです。特に、エンドオブライフケアは、法経学部の先生と連携して研究を行っており、千葉大学の総合力を改めて感じています。

―さまざまな分野の専門家が多いので、ひとつの研究にも多角的な視点が加えられそうですね。
増島 法律の先生、市民教育につながる教育学、医療工学としての工学部、もちろん医学部や薬学部など、たくさんのジャンルの先生と連携ができそうですね。非常に視野が広がりそうです。

―これから千葉大学看護学部を目指す人にアドバイスを。
増島 看護師になるにはさまざまな道があります。その中で大学を選ぶのですから、「なぜ大学か」「なぜ千葉大学か」など、しっかり考えたほうが学びが深くなると思います。私が考える、千葉大学で看護学を学ぶ大きな違いは、技術の修得にスポットが当たる専門学校に対し、看護の対象を深く理解し、根拠に基づく看護に対して深い知識を得られることです。チーム医療が求められる現代、医師と対等な立場で「考えながら看護を実践」することができると思います。

取材日2013.3.23

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