千葉大学看護学部入学から今日まで

看護学部26期生(3年次編入) 島村敦子(訪問看護学教育研究分野 助教)

島村先生 写真

―看護を志したきっかけは?
島村 ありきたりかもしれませんが、幼稚園の時に入院した際に看護師の方にやさしくしていただいたことです。以来、小中高とずっと看護師になりたいと思い続け、都内の短期大学を出てから6年間大学病院に勤務しました。

―その後、千葉大学に編入したのですね。臨床に立ちながらもう一度学ぼうと思ったきっかけは?
島村 訪問看護を学びたかったからです。短大の時の実習で、訪問看護ステーションにお世話になったのですが、その時の経験が非常に印象に残っていました。いつかは訪問看護を学び、その世界で働きたいと思っていたとき、千葉大学には訪問看護学教育研究分野があることを知り、三年次編入を決めました。

―入学してからの千葉大学の印象は?
島村 まず、短大の時から看護師になってもずっと参考にしていた、看護学の教科書や論文を執筆している先生方が自分の目の前にいることに感激しました。文字通り、日本のトップクラスの方が集まっている大学なんだと実感しました。

授業で印象に残っているのは、西千葉キャンパスでおこなわれる普遍科目の授業です。また、他学部の授業にも出席して様々な講義を受講することができ、非常に勉強になりました。その時お世話になった先生には長く気にかけていただき、その後大学院や教員の道を選ぶ際にも相談させていただきました。

編入生というのは、一般入試で入ってきた学生と年代の差があり、大学に溶け込みにくいのでは?と思う方も多いようですが、そんなことはありません。また、専門とする領域や年代の違いはありますが、編入生同士の仲がとても良いため、卒業してからもずっと良い関係が続いています。これは私の今の大きな財産になっています。

編入生の仲間と学部卒業式 写真編入生の仲間と学部卒業式

―大学卒業後はそのまま大学院へ?
島村 いえ、やはり訪問看護の現場に立ちたく、船橋市内の訪問看護ステーションに勤務しました。そこで、認知症のために2年以上お風呂に入れない方に出会いました。「なぜこうなるのか」「どのように対応すればよいのか」などの悩みが尽きず、石垣和子先生(当時千葉大学、現:石川県立看護大学)がいらっしゃる間に、もう一度教えを請いたいと考え、大学院に入学しました。

石垣和子先生、上野まり先生との写真石垣和子先生、上野まり先生と

―大学院は非常に厳しい道だというお話を伺ったこともありますが。
島村 どうでしょうか、確かに大変でしたが、私はそこまでツラいと思ったことはありません。看護の現場に比べたら体力的には何とかなるものでしたし、何より、自分の悩みや疑問を集中して考える時間を持てるということは、とても贅沢だと感じていました。また、同期の仲間がいたことも心強かったです。

―先生方は厳しいのでしょうか?
島村 いえいえ。学問に対してはとても厳しいですが、むしろ非常に親身に丁寧に接してくださいました。助教となった今でもそうですが、千葉大学看護学部の先生方は、何か困ったことがあったらすぐに頼れるという安心感があります。トップクラスの先生方でありながら、生徒との距離の近さはありがたいですね。

―その後、教員の道に進まれるのですね。
島村 大学院に入る前に勤務していた訪問看護ステーションからは「いつでも戻っておいで」と言われていましたので、迷いもありました。でも、この素晴らしい先生方の中で自らの研究を深める機会はなかなかないことです。今経験できることを精一杯経験し、諸先生方から多くのことを吸収しようと思い、大学に残ることにしたのです。

訪問看護ステーションで働いていた頃の写真訪問看護ステーションで働いていた頃

―今はどのようなことを研究されているのですか?
島村 「療養生活の場の空気」についてです。訪問看護は、自宅で病と向き合う方やそのご家族が生活している場に出向いて看護を提供します。そこで作り出される「空気」を読み、時間内に看護を展開していく感覚は、訪問看護を経験した看護師でなければ味わうことができないと思います。訪問看護師の皆さんも家に入った瞬間に何かを感じるけれど、それを表現することが難しいとおっしゃっています。私はその難しいと言う感覚を言葉にすることによって、より多くの人に伝わるようにしたいと考えています。

―興味深い内容ですね。では、先生が考える、訪問看護の課題とは何ですか?
島村 たとえば、認知症の方が介護保険を使う場合、最初はヘルパーさんが選ばれることが多いのです。実際、訪問看護師が療養生活の場に入る頃には、寝たきりになってしまっていたり、ご家族は倒れる寸前であることがほとんどです。もし、早い段階から訪問看護師が入ることができれば、療養している方とご家族が疲弊することを防げるのではないかと考えています。そのためには、病院で働いている看護師はもちろんのこと、広く一般の方々にも訪問看護についてもっと知っていただくことが課題ではないかと思っています。

認知症ケア学会 写真認知症ケア学会で
諏訪さゆり先生、辻村真由子先生と

―では逆に、訪問看護の魅力とは何でしょうか?
島村 目の前にいる療養者様、ご家族様に対し、例えば60分間という時間を全て使うことができることです。大きな病院であれば、看護師一人が複数の患者さんを看ることが求められますが、訪問看護は一対一です。それだけに自分の裁量が大きく責任もありますが、一人の方のお話、お悩みにきちんと向き合えるやりがいは言い表せないと思います。また、型にはまらず自由な発想で看護ができたり、病院にいたら出会えない方たちに会えることも、大きな喜びですね。素顔の療養者様に会える仕事だと思います。

島村先生 写真

―これから千葉大学看護学部を目指す人にアドバイスを
島村 それぞれの領域のエキスパートが揃っているのが、千葉大学看護学部です。そして、総合大学ですので、医学薬学以外にも求めれば多くのことをが学ぶこともできます。看護という学問を学ぶには、千葉大学は最適の場所です。ぜひ、その門を叩いてみてください。

取材日2013.6.19

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