研究|サブプロジェクト
サブプロジェクト| A | B | C | D | E | F | G |

サブプロジェクトF:日本型看護職者キャリアディベロップメント支援システムの開発

1.目的

2.研究組織(平成17年度)

3.平成17年度までの研究成果の要約

4.主要な研究業績


1.目的

 「日本型看護職者キャリアディベロップメント支援システム」は、看護・教育実践の質向上を究極的な目的として、看護職者に高品質な教育を提供し、職業的発達を支援することを目指して構築された。システムの主要概念は「他律から自律への移行」である。
 これまで日本の看護職者の圧倒的多数は、医師主導の他律的な環境の中で養成され、免許取得後は自律的な学習を求められるという矛盾の中にいた。「他律から自律への移行」の推進こそが日本の看護継続教育を成功に導く鍵である。これは、日本の看護職養成教育の歴史研究、看護継続教育の異文化間比較の結果、明らかになった。また、看護継続教育に関する研究を対象とした文献研究を行い、『「他律から自律への移行」の推進』という観点からその結果を吟味し、このシステムを構築した。他律的環境の中で養成された看護職者が自律的な学習へと円滑に移行するためには、魅力的な教育プログラムの提供が最も重要である。このシステムは、そのための系統的な方法であり、第1に、教育を提供している医療機関・教育機関等の現状を把握するとともにそこに就業する看護職者の教育二一ド、学習二一ドを診断する。第2に、その看護職者がどのような教育プログラムを魅力的だと感じるのかを明らかにする。第3に、診断結果に魅力的だと感じる要素を加味し、組織の理念等を反映しつつ、現状に即した教育プログラムを立案する。また、プログラムヘの参加を強く動機づける要素も加味し、それらを実施、評価する。このシステムは立案・実施・評価のサイクルを循環させながら、医療機関や教育機関のSD (staff development)、FD (faculty development)を目的とした魅力的な教育プログラムを編成し、日本の看護継続教育の命題である『「他律から自律への移行」の推進』を実現へと導く。

2.研究組織(平成17年度)

 各テーマ毎に研究グループ組織し、研究を進めていくと共に、研究の進捗状況や成果について、合計40回にわたる合同会議を開催し、意見交換を行った。

リーダー: 舟島なをみ
サブリーダー: 野本百合子
テーマ1: 日本の看護基礎・継続・卒後教育の現状と問題の解明
(舟島なをみ・田中裕二・野本百合子・三浦弘恵・塚本友栄・亀岡智美・吉富美佐江
中山登志子・横山京子)
テーマ2: 日本文化を反映した看護職者のキャリアディベロップメント支援システムを構成する自己評価尺度の開発
(舟島なをみ・太田節子・野本百合子・三浦弘恵・山下暢子・村上みち子・吉富美佐江・宮芝智子
亀岡智美・中山登志子・鈴木恵子・中谷啓子)
テーマ3: 日本型看護職者キャリアディベロップメント支援システム開発に向けた理論的枠組みの構築とアクションリサーチの展開
(舟島なをみ・三浦弘恵・松田安弘・永野光子・野本百合子・鈴木美和・山下暢子・村上みち子
宮芝智子・吉富美佐江・塚本友栄・太田節子・田中裕二)
テーマ4: 日本型看護職者キャリアディベロップメント支援システム開発に向けた質的研究成果のメタ統合
(山下暢子・舟島なをみ・野本百合子・松田安弘・亀岡智美・中山登志子・鈴木恵子・本郷久美子)
テーマ5: わが国と米国の比較による看護学教員ロールモデル行動自己評価状況に関する異文化間研究
(亀岡智美・本郷久美子・舟島なをみ・野本百合子・三浦弘恵・山下暢子・中山登志子)
テーマ6: わが国における看護職特有の文化の解明
(三浦弘恵・舟島なをみ・野本百合子・石垣和子)

3.平成17年度までの研究成果の要約

日本型看護職者キャリアディベロップメント支援システムの開発に向け、次の6つのテーマについて研究を推進し、成果を累積した。


○テーマ1:日本の看護基礎・継続・卒後教育の現状と問題の解明

 平成15年度にデータベース化した平成11年から平成15年の5年間の主要5学会の学術集会講演集から抽出された看護学教育研究についてさらに分析を進めた。

○テーマ2:日本文化を反映した看護職者のキャリアディベロップメント支援システムを構成する自己評価尺度の開発

 平成17年度は、平成16年度に開発した尺度の信頼性・妥当性を検証した成果を原著として発表した。また、新たに看護学教員、在宅看護を展開する看護師の職業的発達を支援するための尺度開発に取り組むと共に、訪問看護師、保健師の学習ニードを解明し、その成果を発表した。さらに、既に開発した尺度による調査結果に基づき、看護職者の学習ニード・教育ニードと個々の特性の関係を明らかにした。

○テーマ3:日本型看護職者キャリアディベロップメント支援システム開発に向けた理論的枠組みの構築とアクションリサーチの展開

 平成16年度は、「日本型看護職者キャリアディベロップメント支援システム」に基づき、本サブプロジェクトの成果活用に同意した地方の2病院(A病院・B病院)の院内教育プログラムを立案した。平成17年度は、システムの検証に向け、各病院に所属する看護職者の教育ニード・学習ニードの変化を明らかにするために調査を実施した。また、個々の病院が自立して院内教育プログラムを立案・実施できるよう、2病院合同合宿を開催した。平成18年度は、個々の病院が、自ら教育内容の改善に向けて取り組めるよう、支援する予定である。また、新たに、D県立病院共通の教育プログラム、E県看護協会の教育プログラムを作成するための活動を開始している。同様に、看護学教員教育支援システムの開発に向け、わが国の大学・短期大学におけるFDの実態を明らかにするための研究に着手している。

○テーマ4:日本型看護職者キャリアディベロップメント支援システム開発に向けた質的研究成果のメタ統合

 平成16年度に確立したメタ統合の方法を用いて実施した研究を原著として発表すると共に、その成果を活用し、看護学実習における教授活動に関する理論開発への取り組みを開始した。

○テーマ5:わが国と米国の比較による看護学教員ロールモデル行動自己評価状況に関する異文化間研究

 平成16年度、既にわが国の看護学教員を対象に開発した尺度を翻訳し、英語版「看護学教員ロールモデル行動自己評価尺度」を作成した。その尺度の内容的妥当性を検討するために、共同研究者Dr.Gorzka,P.のコーディネートの下、米国の看護学教員による専門家会議を開催した。平成17年度は、その結果に基づき、修正した英語版「看護学教員ロールモデル行動自己評価尺度」、「看護学教員特性調査紙」を用いて、米国の看護学教員が知覚する看護学教員のロールモデル行動の現状を明らかにするための調査(パイロットスタディ)を実施した。

○テーマ6:わが国における看護職特有の文化の解明

 平成17年度から、わが国における看護職の職業文化解明への取り組みに着手した。その目的は、わが国の看護職者がおかれている職業を背景とする文化を明らかにすることである。文献検討の結果、「日本の看護職特有の文化」を解明するために次の4つの手続きが必要であることを明確にした。その手続きとは『第1:職業文化を解明するための概念枠組みを構築する』、『第2:第1の手続きを通して構築した概念枠組みを用いて「日本の看護職の文化」を明らかにする。』、『第3:第1の手続きを通して構築した概念枠組みを用いて「海外の看護職の文化」、「他職種の文化」を明らかにする』、『第4:第3の手続きの成果と「日本の看護職の文化」の比較を通し、「日本の看護職特有の文化」を明らかにする』である。平成17年度は、第1の手続きとして、次のような6段階の活動を実施した。
 第1段階:一般的、専門的辞書を用い、「職業」の意味を調べ、その意味を理解するための「職業」に関する書籍を概観し、本研究の主要概念である「職業」を定義した。
 第2段階:一般的、専門的辞書を用い、「文化」の意味を調べ、その意味を理解するための「文化」に関する書籍を概観し、本研究の主要概念である「文化」を定義した。
 第3段階:職業文化の意味を調べ、本研究における「職業文化」を定義するとともに、これを構成する概念を明らかにした。
 第4段階:職業文化・職場文化(workplace culture)に関わる文献を精読し、「職業文化」を構成する概念を明らかにするために必要な変数を明らかにした。
 第5段階:下位文化(subculture)について検討し、本研究が探求する側面を限定した。
 第6段階:国内外の先行研究を概観し、本研究の方向性と研究方法について示唆を得、概念枠組みを構築する途上にある。
 このように構築を目指す概念枠組みが、他職種の文化の解明にも適用できるか否かを検討するため、医師を対象に「あのようになりたいと思う医師」についてインタビューを行った。その結果、この概念枠組みが他職種の文化解明にも適用できるという手応えを得た。

4.主要な研究業績

原著

 舟島なをみ,亀岡智美,鈴木美和:病院就業する看護職者の職業経験の室に関する研究−現状および個人特性との関係に焦点を当てて−,日本看護科学学会誌,25(4),3-12,2005.
 舟島なをみ,三浦弘恵,亀岡智美:病院に就業する看護師の学習ニードに関係する特性の解明−院内教育のあり方の検討に向けて−,日本看護学教育学会誌,15(2),13-24,2005.
 三浦弘恵,舟島なをみ:教育ニードアセスメントツール−臨床看護師用−の開発,千葉看護学会会誌,11(1),25-30,2005.
 三浦弘恵,舟島なをみ,鈴木恵子:在宅における看護実践自己評価尺度の開発:千葉看護学会会誌,11(1),31-37,2005.
 塚本友栄,舟島なをみ,野本百合子:我が国の看護学教育研究における倫理的問題−1999年から2003年の抄録分析を通して−,千葉看護学会会誌,11(2),1-7,2005.
 松田安弘他:看護学実習の目標達成に必要不可欠な教授活動の解明,看護教育学研究, 14(1), 51-64,2005.
 山下暢子:看護学実習における学生の「行動」と「経験」の関連−行動概念と経験概念のメタ統合を通して, 看護教育学研究, 15(1), 20-33, 2006.


学会発表

◆国内における発表
 横山京子,舟島なをみ:小児看護学教育研究の動向−1999年から2003年の研究に焦点を当てて−,日本看護学教育学会第15回学術集会,2005/7/23-24(大宮).
 田中裕二,野本百合子,舟島なをみ:過去5年間の看護学教育研究の動向−解剖生理学の教育に関する研究に焦点を当てて−,日本看護学教育学会第15回学術集会, 2005/7/ 23-24 (大宮).
 三浦弘恵,舟島なをみ;病院に就業する看護師の教育ニードアセスメントツール開発−信頼性・妥当性の検証−,日本看護学教育学会第15回学術集会, 2005/7/23-24 (大宮).
 亀岡智美,中山登志子,舟島なをみ:大学・短期大学の所属する看護学教員の教育ニード,日本看護学教育学会第15回学術集会, 2005/7/23-24 (大宮).
 松田安弘,三浦弘恵,舟島なをみ,永野光子,山田敬子,塩手元子,中嶋和代,河村美枝子:A病院における看護師の教育・学習ニードの診断,第36回日本看護学会(看護教育),2005/8/4-5(宇都宮).
 永野光子,三浦弘恵,舟島なをみ,松田安弘,川村良子,高橋千晶:B病院における看護師の教育・学習ニードの診断,第36回日本看護学会(看護管理),2005/11/4-5(奈良).
 三浦弘恵,舟島なをみ:異なる2病院に就業する看護師の教育・学習ニードの比較−院内教育プログラム立案に向けたアセスメントツールの有用性−,第25回日本看護科学学会学術集会,2005/11/18-19(青森).

◆海外における発表
・Kameoka T., Naomi Funashima N., Yokoyama K., Suzuki S., Sugimori M.:The Relationships between Personal Attributes and Quality of Professional Activities of Nursing Faculty in Japan. The 16th International Nursing Research Congress, Sigma Theta Tau International Honor Society of Nursing,2005/7/14-16 (Hawaii).
・Yokoyama K., Funashima N., Kameoka T., Suzuki S., Sugimori M.:Quality of professional activities of Nursing Faculty in Japan. The 16th International Nursing Research Congress, Sigma Theta Tau International Honor Society of Nursing, 2005/7/14-16 (Hawaii).
・Kameoka T., Murakami M., Funashima N., Sugimori M., Yokoyama K., Matsuda Y.: Important Factors for the Quality of Professional Activities of Nursing Faculty, 38th Biennial Convention Sigma Theta Tau International,2005.11.12-16 (Indianapolis).
・Miura H., Funashima N.: The Development of a Learning Needs Assessment Tool for Nursing Faculty: Promote Evidenced-Based Faculty Development in Japan, 19th Annual Pacific Nursing Research Conference,2006/2/24-25(Hawaii).
・Miyashiba T., Funashima N., Hiroe Miura: Evidence to support faculty development in Japan: Development of the Self-Evaluation Scale of Teaching Behavior in Nursing Skills Laboratories, 19th Annual Pacific Nursing Research Conference, 2006/2/24-25 (Hawaii).

ページのトップへ
Copyright(C)2006千葉大学 21世紀COEプログラム. All rights reserved.