エンド・オブ・ライフケア看護学への千葉大学の取組

講座について

教員紹介 / 長江弘子(特任教授)

講座の開設にあたって

領域横断的エンド・オブ・ライフケア看護学が目指すもの

1、なぜ、領域横断的エンド・オブ・ライフケア看護学が重要なのか

長江弘子(特任教授)
特任教授 長江弘子

終末期医療をめぐる現状において、ケアをする人もケアを受ける人も満足することができる、最善を尽くしたと納得することができる支援の在り方が問われています。
実際の終末期の臨床現場では、がん患者の高齢化があり、しかも高齢化のなかで慢性腎不全,慢性呼吸不全など慢性の臓器不全疾患が非常に多くなり,これらの患者さんのターミナルケアが現実の問題になってきました。さらには,パーキンソン病やALSといった神経変性疾患,また,進行性の認知症,そしてごく最近には施設ケアにおける寝たきりの認知症高齢者の看取りをどうするかという問題が一般誌でも話題になるようになりました。

このような多様な現場における多様な疾患の終末期医療の在り方を模索する今日的課題を解決するためには、これまでの「緩和ケア」や「ターミナルケア」では説明できない新たな概念が必要です。医学、看護学、哲学、倫理学等、多様な学問領域から「エンド・オブ・ライフケア」という新しい概念を生成し,死にゆく人々のケアを長い人生の中で最期までどう生きるかを支える在り方を幅広く考えなければならない課題に直面していると考えます。このことは専門職だけの課題ではありません。

2、日本型エンド・オブ・ライフケア看護学の構築は日本人の生と死の文化の創出である

人々それぞれのその人らしい生き方を全うする人生の幕引きは、医療者や専門職が考え、演出すればいいというものではありません。人生の主人公であるその人がどのように考えるか、ケアを受けるその人がどのようなケアを受けたいのかということを表明できることが大切であると考えます。

ですので、日本型エンド・オブ・ライフケア看護学は、ケアを提供する人もケアを受ける人も「一人の人間としてどう生きたいか、どのように最後の時間を過ごしたいかを共に考える」ことを基本的な立場として考えていきます。そして、そのような看護を提供する知識や技術、そして成果を体系的に示し、長期的展望に立って必要な人材育成を行っていく使命があると考えます。

さらに本事業では日本型エンド・オブ・ライフケア看護学とは何なのかを地域社会や世界にむけて発信することが必要と考えています。そうして、多くの人々と共に考え、共有することをすすめていきます。

我が国で初めて、日本型エンド・オブ・ライフケア看護学という新たな看護学分野の構築を目指す本事業は、看護学の発展のみならず、この国特有の価値観や信念を大事にしつつ、日本人の人生観、死生観の変革であり、新たな文化の創出ではないかと考えます。

略歴

氏名
長江 弘子(ながえ ひろこ)
職名
特任教授
学位
博士(看護学)
所属研究室
エンド・オブ・ライフケア看護学(内線番号:5836)
部屋番号
334
担当科目学部
エンド・オブ・ライフケア看護実践論,生きるを考える(普遍教育)
大学院
エンド・オブ・ライフケア看護学Ⅰ
研究テーマ
地域で活動する訪問看護師ならびに病院における退院支援・調整に関わる看 護師の生活と医療を統合する継続看護の実践能力の解明とその成果に関する研究を中心的なテーマとしている。以下の研究資金を得て看護師の実践をベースとした研究と教育に取り組んでいる。
 「生活と医療を統合する継続看護マネジメント能力を育成する教育プログラムの開発と検証」(H22年度‐H25年度 科学研究費補助金、基盤研究(B))
 「非がん患者の在宅緩和ケアにおける看護実践のベストプラクティスとその効果検証」(H22年度-H24年度科学研究費補助金、挑戦的萌芽)
研究業績
  1. 山田雅子, 吉田千文, 長江弘子, 宇都宮宏子, 内田千佳子, 廣岡佳代、退院調整看護師の実践力向上を目指した教育プログラムの開発、聖路加看護大学紀要、36号、 P55-58、2010.
  2. 中西三春、長江弘子、永田智子、服部啓子、新野由子、病院における高齢者への退院支援の実施状況の調査‐在宅ケア事業所の関与に着目して‐日本公衆衛生雑誌、55巻7号,p456-464、2008.
  3. 長江弘子、百瀬由美子、尾崎章子、4ステップモデルを用いた倫理教育プログラムの展開方法、保健師ジャーナル、No.64、Vol2、p40-48、2008.
  4. 長江弘子、日本におけるリエゾンナースの可能性、コミュニティケア、13巻1号、p58-63、2007.
  5. 長江弘子、在宅移行期における家族介護者が生活を立て直すプロセスに関する研究、聖路加看護大学紀要、p17-25、2007.
  6. 大森純子,宮崎紀枝,麻原きよみ,百瀬由美子,長江弘子,加藤典子,梅田麻希,小林真朝、保健事業の展開におけて保健師と事務系職員の意見が異なる状況に関する質的分析、日本地域看護学会誌、9巻2号、p81-86、2007.
  7. 長江弘子、地域連携の意味と取り組みの視点、看護展望、12巻6号、p84-90、2006.
  8. 川越博美、長江弘子監修、早期退院連携ガイドラインー退院する患者・家族のためにー、日本看護協会出版会、2006.
  9. Seiko Fukui, Hiromi kawagoe, Msako Sakai, Noriko Nishido, Hiroko Nagae, Toshie Miyazaki 、Determinants of the place of death among Terminally ill cancer patients under home Hospice care in Japan、Palliative medicine、17、 p445-453、2003.
  10. 長江弘子,千葉京子,中村美鈴,柳沢尚代、生活障害を持ちながら地域で暮らす一人暮らし女性高齢者に関する研究―「生活の折り合い」の概念構造、日本地域看護学会誌、3巻1号 、p123-130、2001.
  11. 長江弘子,成瀬和子,川越博美、在宅ホスピスケアにおける家族支援の構造―訪問看護婦の支援に焦点を当てて―、聖路加看護大学紀要、26号、 p31-43、2000.

賞罰:Community Health Nursing Poster Award、23.Nov,2007.
The 1st Japan-Korean Joint Conference on Community Health Nursing Poster Award to "Evaluation of the Ethics Education Program for Home Health Nursing-- The Changes in the Awareness of Home Health Nurses and Changes in MSQ "
所属学会
日本在宅ケア学会(理事)
日本看護科学学会(和文誌査読委員)
日本公衆衛生学会
日本地域看護学会(査読委員)
日本看護教育学会(査読委員)
国際地域看護学会、日本保健医療社会学会