エンド・オブ・ライフケア看護学への千葉大学の取組

生きるを考える/2011年度

普遍教育「生きるを考える」第4回の様子

慢性疾患患者とその家族のエンド・オブ・ライフケア

[日程]平成23年10月25日 III時限/12:50〜14:20(場所 B)
[講師]谷本 真理子(千葉大学 准教授)

  • 講義の様子
    講義の様子
  • 谷本 真理子先生
    谷本 真理子先生

受講生の感想

谷本先生の講義では、まず看護とは、慢性疾患とは、日本の慢性疾患エンドオブライフケアをめぐる状況について説明がありました。その中で、緩和ケア入院対象はがんとHIVのみであり、慢性疾患患者は対象外である現実が示されました。続いて非がん患者のエンドオブライフケアに関する動きとして、日本では2007年に厚生労働省から終末期医療の決定プロセスに関するガイドラインが示され、2008年に終末期医療のありかたについて、がん患者以外の患者の終末期医療の必要性を日本学術会議がまとめ、2009年には日本弁護士連合会が終末期医療に関する報告書を提示し、2010年には循環器疾患における終末期医療に関する提言を学会が出していることが示されました。

次に、慢性疾患患者が最後まで生ききる過程をどのように支えるかということについて事例を挙げて述べられました。ここでは、慢性疾患患者の終末ケアの難しさを知りました。日常生活の中で慢性の臓器不全は、全体のバランスが取れるか否かであり、症状が予測しにくく、複雑、多様な為に、本人や家族や医療者、そして治療とケアの間でもズレが生じやすくゴールが見えにくい特徴を挙げられ、そのために、現実にはケアが増え周囲が負担に感じることになる構図が示されました。また、患者も苦しい状況を認識できない程苦しいことに慣れてしまっていたり、自分の体を管理できないという自尊感情の低下を招いていたりするといいます。しかし、谷本先生は、患者は今の体が分かればそれに合わせて生活できると考えておられ、看護師は、最後まで応答すること、応答することを忘れないことの大切さを感じたとまとめられました。

感想としては、病状の経過が極めて予測し難い慢性疾患患者さんの看護はエンド・オブ・ライフケア看護学が取り組む重要な領域のひとつであるということを実感させられる講義でした。どのような状況の患者さんであっても、謙虚な気持ちで看護してくれる人があってこそ人生の価値を見失わずに生きていけるのではないかと思いました。