エンド・オブ・ライフケア看護学への千葉大学の取組

生きるを考える/2011年度

普遍教育「生きるを考える」第6回の様子

障害を持つ小児と家族のエンド・オブ・ライフケア

[日程]平成23年11月8日 III時限/12:50〜14:20(場所 B)
[講師]佐藤 奈保(千葉大学 講師)

  • 講義の様子
    講義の様子
  • 佐藤 奈保先生
    佐藤 奈保先生

受講生の感想

はじめに、子どもは「生きる」や「死ぬ」ということをどのように考えたり感じたりしているかということについて考えました。子どもの死の概念の発達について、「死の概念」の構成要素には、体の機能停止、非可逆性、普遍性、因果性という考え方があることや、認知発達の分野での考え方が紹介されました。小学校高学年になると非現実的なものを大人とほぼ同じように考えられるようになり、考えるのに影響を与えるものとしては、背景にある文化、メディアなどを含む環境、子どもの個別の体験などがあり、同じものを見ても年齢により異なることが示されました。また、佐藤先生は、特に2008年の死亡原因のうち15~19歳の第1位が自殺であることが大ショックであると取り上げられました。

次に、疾患をもつ子どもと家族のエンド・オブ・ライフケアについて話されました。1989年に国連総会で採択され、1994年に日本も批准した「児童(子ども)の権利に関する条約」について、1999年に日本看護協会が示した「小児看護領域で特に留意すべき子どもの権利と必要な看護行為」と合わせて説明されました。問題となるのは、予後不良な状態にある子どもに病状のどこまでをどのように伝えるか、治療の選択はどうするのか。重篤な状態にある新生児や重症心身障害児など自分の意思を表明することが難しい子どもの権利をどのように擁護するのかであることが示されました。次に、小児のホスピスについて、日本でも近年その取組が進められつつあることや、欧米での子どものホスピスを利用できる対象者について、イギリスの例を英国小児学会と英国小児緩和ケア協会の定義を取り上げて示されました。子どもを看取った家族への支援としては、決めた結果ではなく意思決定過程へのフィードバックをして決めたことへの満足感を持てるようにすることが重要であると述べられました。

更に、終末期にある親をもつ子どものエンド・オブ・ライフケアについて、子どもを含めた家族看護の視点が重要であることを佐藤先生の臨床経験の例から述べられました。

最後に、進歩する医療の中での「生きる」を考えることや、2009年に一部改正された「臓器の移植に関する法律の一部を改正する法律」が公布され、15歳未満の小児の法的脳死判定及び臓器提供が開始されたことなどが、子どもの「生」「死」「いのち」をどのようにとらえるのかということに影響を与え、今後子どもと家族を支えていく際の課題となると締めくくられました。

感想としては、佐藤先生が最初に語りかけられたとおり「この講義を知識として貯めるのではなく、講義から考える講義」になりました。子どもの看護について考えることは、一見複雑に思える大人の看護を考える上で、例えば非現実的なものを考えることや病名告知、ホスピスの利用方法、医療の選択基準などについて簡潔な示唆を与えてくれるのではないかと思えました。