10周年記念特別インタビュー10周年記念特別インタビュー

10周年を迎えて

伊藤 隆子先生

伊藤隆子先生
所  属 千葉県立保健医療大学 健康科学部 看護学科 准教授
本学での在職期間と職位 2007年5月~2010年3月 講師
本学での在学期間 2001年4月~2007年3月

私が千葉大学の大学院で学び直そうと志したきっかけは、当時私が就職していた在宅介護支援センターに、データ収集にみえていた牛尾裕子先生と出会ったことでした。私は、在宅介護をしている家族の相談にのる世界に身を投じたものの、介護施設という現場における看護とは何なんだろうという疑問を感じていました。牛尾先生の「看護と介護の源流は同じところから発している」という言葉に、看護学部で学んだ経験がよみがえり、「学問をするとこんなにも頭が整理されるのか」と知識と理論の持つ力に衝撃を受けたのを今でも覚えています。そこで縁あって、石垣和子先生の門をたたいたというわけです。

私の場合、進学を思い立った時期が遅かったために、大学院での学びは困難の連続でした。まず、ゼミでは英語の本を1冊渡され皆で輪読しました。興味のある英語の論文を大約してプレゼンするということも初めての経験でした。何十年ぶりかの英語に七転八倒して泣きながら訳していたことを思い出します(苦笑)。それでも、必死でついて行くことができたのは、同じ学問を志しているという連帯感を持つ仲間がいたから。私よりずっと若い仲間が頑張っている姿をみて、負けてはいられないと思ったものです。学位論文を書き上げている真っ最中の院生に、いわゆる「追い込みメシ」を皆で提供したのもなつかしい思い出です。博士前期課程では、ケアマネジャーの仕事との両立の難しさにもぶつかりましたが、現場感覚を持ちながら研究ができたこと、石垣先生という学問には厳しいけれど人間味あふれる先生に出会えたことは本当に幸福でした。

千葉大学看護学部は、日本で唯一、訪問看護学を標榜する所。そこで学んだ私たちもまた、訪問看護の有用性を言葉にして、多くの人に伝えていかなくてはならない、そう考えています。訪問看護師の多くが疲弊し、訪問看護を受けたくとも受けられないという状況のなか、千葉大学の存在意義は大きく、そして寄せられる期待は高まっていることと思います。これから益々多くの方が訪問看護を学び、そして訪問看護によって救われる命が増えることを期待しています。