亥鼻IPEの方法

亥鼻IPEでは、 座学を最小限にし、演習・実習という体験と、学生自身でのグループワーク、ポートフォリオを活用したふりかえりによって学びます。


体験による学習

亥鼻IPEでは、教室での講義は最小限に、本物の患者・サービス利用者や、医療現場、医療専門職と向き合う演習や実習をとおして、実際に体験し学びます。

たとえば、患者・サービス利用者とふれあう「ふれあい体験実習」(Step1)、実際の医療現場での連携のあり方を見学する「フィールド見学実習」(Step2)、医療現場で起こりうる対立と葛藤を解決する「対立と葛藤の解決」(Step3)、模擬患者さんの希望をくみ取り、最前線の医療専門職に相談しつつ退院計画を立てる「退院計画立案」(Step4)などといった難しい課題に投げ出され、そこでの体験をとおして、感じ、考え、学びます。しかし、こういった困難な課題は、自分一人の力のみで達成することはできません。そこで、連携し、知恵と力を出し合う必要性が生まれます。

グループワークによる学習

演習や実習では、3学部混成の3~4人からなるグループで、あるいはグループを2つ合わせたユニットで、グループワークをおこないます。

このグループは必ず、医学部、看護学部、薬学部の3学部の学生から構成されています。それは、異なる専門領域の学生たちで学び合い、助け合う体験をとおして、専門職連携実践の基盤であるグループメンバー間の信頼を実感してほしいからです。

さまざまな学部の学生一人ひとりが、それまでに身につけている専門性を出し合い、協働して共通の課題に取り組みます。グループワークでの学習によって、お互いを知るだけでなく、 自分を見つめなおし、自身の専門性を深め、自律しつつ連携していく姿勢や能力を修得していくことをねらいとしています。

そのようなグループワークを支えるために、わたしたちは、亥鼻IPEの基本的原則(「グランド・ルール」)を制定しています。このグランド・ルールは、学生のみでなく、教員や、専門職も、亥鼻IPEにかかわるすべての人が守ります。教員や専門職は、学生が十分に思考力・判断力をもった成人であることを認め、学生が主体的に考え、行動し、学習目標を達成できるように援助し支援する責任と役割をもっています。

また、学生相互の学習のみではなく、教員や実習先の各専門職にとっても、亥鼻IPEへの参加を通して、さらに自身の専門性や連携に対する理解や技術や理解をふりかえり深める、双方向性、多方向性の学習効果も期待しています。

ふりかえりによる学習―リフレクションとポートフォリオ

こうした体験やグループワークでの学習を、ただその場で終わる一過性のものにせず、しっかりと自らの能力を生んでいくものにしていくために、亥鼻IPEではふりかえりによる学習を大切にしています。

リフレクションとは、内省あるいは省察、つまり「ふりかえって考える」という意味です。今回の実習はどうだったか、グループワークはどうだったか、自分のおこなった行動をふりかえって考えなおすことで、ただの一時的な体験に終わらせず、これからの課題を見出し、次の行動に活用できる知見を獲得し、より自分自身を高めていくことができます。日々実践しながらリフレクションし、リフレクションしながら実践するという学習態度は、専門職にとって不可欠なものです。

学生が卒業し、多忙で複雑な医療現場のなかに入っても、事実として何が生じており、その時自分が何を考え、どのように行動したのかについて、後からよくふりかえられるよう記録を残しておく習慣が必要だと考え、毎回の授業について、「授業の記録/リフレクションシート」と「自己評価」「グループ評価」の提出を課題としています。

ポートフォリオは、もともと「紙ばさみ」という意味で、日々の学習履歴を蓄積していき、後で見なお し、自己の学習のプロセスの記録として役立てるためのものです。学生は「学習ガイド」や「授業の記録/リフレクションシート」、教材の「学習の進め方」や ワークシート、そして授業で配布される資料などさまざまなものを、「亥鼻IPEポートフォリオ」に綴じこんでいきます。

つまり、亥鼻IPEで学んだことすべてが、目に見える成果として形になっているものが「亥鼻IPEポートフォリオ」です。いつでも学習を体系的にふりかえることができるようなポートフォリオを作成することで、体験による学習を可視化し、自己の学習に活用していくことを促しています。

このような方法によって、学生一人ひとりが亥鼻IPEを終えたあとでも、さまざまな現場でさまざまな人びととともにIPEをおこない、さらなるIPW能力を身につけていくための核となる、生涯にわたって学び続ける態度を修得することを期待しています。

Moodleの活用

また、亥鼻IPEでは、Moodleという、オープンソースのeラーニング学習管理システム(Learning Management System:LMS)を活用しています。各Stepのコースを作成し、連絡事項の通知や情業資料の掲載をはじめ、課題の提出や入力など、基本的にmoodleにておこなっています。適宜バージョンアップを行い、より扱いやすいシステムに改善しています。

iFolio(e-portfolio)の導入

さらに、eポートフォリオ(Web上のポートフォリオ)も導入しています。iFolioとは、亥鼻e-ポートフォリオ:inohana e-portfolioから来ています。オープンソースeポートフォリオシステムMaharaを採用し作成しています。iFolioはMoodleと連動しており、数回のクリックで、Moodleに提出した課題を、自分のiFolioに転送・蓄積させていくことができます。インターネットに接続できる環境からいつでも自分の学びをふりかえることができます。