看護学教育ワークショップ 質問への講師からの回答

「看護学教育支援におけるICT活用の可能性~コロナ禍での模索のプロセスと課題~」
宮城大学大塚眞理子先生への質問と回答

当方も大学生協の紹介で同じ書籍を4月から導入しました。HPの先生の取り組みを参考に致しました。
私の科目も老年看護学で、対象が2年生ですが、紙カルテのほうが良いという希望が多く、後期は選択性にしたところ残念ながら9割が紙版を選択しました。
次年度選択制にすべきか、全員電子に限定するか迷っています。大塚先生の大学では、学生の反応はいかがでしょうか。
私のところ(老年看護学領域)では、1年生の概論から2・3年生の援助論まで、同じ電子教科書を使っています。
毎年、1年生で紙の教科書の方を買う学生が2~3名おりますが、今年の1年生は102名全員が電子教科書を購入し使っています。2017年の1年生の反応は、電子教科書は使いにくい、紙の教科書の方がよいとレスポンスカードに書いてくる学生が多かったですが、今年はそういうコメントはほとんどありませんでした。
学生のレスポンスには個別に対応してきましたし、毎年、前年度を振り返って対策を講じています。2年生、3年生と教員も学生も経験を積みますので使い方も変わってきています。電子教科書は紙の教科書とは使い方が異なります。
教員が楽しんで面白がって使えば学生もついてくるというのが実感です。学生さんの方が創意工夫して自分なりのやり方を工夫していますので、学生から教えてもらっています。
大塚先生のご講義資料の中に「2017年入学生からノートパソコン必携になった」と記載があり、講演の中では「いくつかのチャンスが重なり」という説明がございました。
ノートパソコンが必携となった背景、きっかけについて教えて頂きたいと思いました。
宮城大学の他の学部では、すでにノートパソコンを必携にしている学部がありました。
2017年度は宮城大学が準備してきた教育改革の初年度で、カリキュラムや教育運営システムが大きく変わりました。ICT化を進めるという方針で、科目登録や授業評価などの教育システムの整備が行われました。学生に対してもパソコンを全学必携にし、全学共通科目でパソコンを使った初年次教育が始まりました。
学内のWi-Fi環境を整えたり、床下にコンセントの設置が行われたり、ICTの活用について学生の相談にのる担当者が配置されたりしました。
貴重な講演をありがとうございました。
6枚目のスライドに電子教科書導入当初、紙媒体が良いという意見や、老年だけ?という記載があります。
本学は既存の在り方に固執する傾向にあり、新しい取り組みを学科一丸となって取り組めない状況です。
先生はどのように教員間や学生の理解を得ながら進めてこられたのか、進めるにあたって留意して点があればご教示いただきたいと思います。
まず、老年看護学領域の教員で話し合い電子書籍導入の合意を得ました。
教員間が自分の得意なことを教授するだけではなく、老年看護学教育として教員間の統一したものを追求した時に、電子教科書は誰がどこをどのように教授したかを共有できるので、教員間で共有するツールとしても電子書籍がよいと思いました(マーカーや付箋を共有しています)。
学科一丸となることは考えておりませんでしたが、1年生のライフステージ看護学概論Ⅰという科目は、小児・成人・老年の3つの領域で担当しているので、小児・成人には働きかけました。領域ごとに、1年の概論から2・3年の援助論につなげていくので領域ごとに検討しているようです。
学生については、学生の不満や苦情をよく聞き、個別対応や改善策を実際に実施していきました。留意点は、紙の教科書の使い方と電子教科書の使い方は異なるので、電子教科書のメリットを最大限に活用し、教員が楽しみ、面白がって取り組み、学生にやって見せることだと思います。また、学生の創意工夫を聞いて学生から学ぶことも必要だと思います。
大塚先生のご発表にあったエクセルを使用したグループワークですが、スプレッドシートを使用した形という認識でよろしいでしょうか。
本学もスプレッドシートを使用して、カンファレンス内容を把握する取り組みは行っていますので大変興味があります。
OneDriveから接続させて実施するといったことは行っていなかったため参考になりました。活用していきたいと思いました。
スプレッドシートというものは知らないのですが、多分エクセルと似たもののようですね。
OneDriveで学生同士が、他の学生の検討内容や成果物を共有できる点がよいと思っております。
他にもいろいろなツールがあるようですので検討していきたいと思います。
大塚先生の講演は、使っていないソフトでしたので、今後の情報として知っといて損はないかなというものになります。
グループワークについては、zoomのブレイクアウトルームを使って実施しておりますが、その方法は、対面よりも良い面もあります。
むしろ、大塚先生がコロナ前からICT活用を意識していくようになった視点が、今回どのように発展したかを知りたかったです。
グループワークの運営が対面でもwebでも同じというのは同感です。また、顔出しをどうするかは、web会議全体での重大な課題です。
一般にコロナ禍でICTの活用は格段に進んだと思います。
私自身は、1学年100人という学生と対面だけだと一方向になりやすいので、コロナ前からICTによって教員と学生、及び学生同士の双方向性の学修が進められると思っておりました。
それがコロナ禍で、対面なしで遠隔授業を工夫することによって、その思いが確信となりました。それが私自身の発展だと思います。
遠隔授業の方法はライブで講義を提供するだけではない工夫ができたと思っております。

「ICTを活用したシミュレーションラーニングの実際」
東京医科大学阿部幸恵先生への質問と回答

東京医科大学阿部先生の講演「ICTを活用したシミュレーションラーニングの実際」VRの動画はどのように作成されたのでしょうか。
以前業者に問い合わせたところ、高額であったため断念しました。素人では作成は難しいものでしょうか。
VRには、実写とCGの2つの作り方があります。
実写では、現在360度カメラなども出ているので、以前よりVRもどきの映像は撮影できるようになってきたと思います。
しかし、ヘッドマウントディスプレイを装着しての本格的なものは、企業にお願いする方がよいでしょう。私は、実写もCGも企業と共同で行っているので費用がかかっていません。
私がシナリオを提供するのみでなく、VRを教材としたときの学習目標からVR装着後のデブリーフィングまでを作りこみ、実際装着するVRの部分のみを企業が作成しているというものです。
実際、VRのみの作成を企業に単純に依頼したら、作成費用は高額になると思います。

「その他」
千葉大学大学院看護学研究院附属看護実践・教育・研究共創センターへの質問と回答

今回のテーマについて、CQIモデルVer.1ワークシートを用いた研修結果を作成されたものがあれば、ご紹介頂きたいと思います。CQIモデルVer.1ワークシートに関心があり、どのように活用するのか、具体例が頂きたいので。
今回のテーマ「看護学教育支援におけるICT活用の可能性」に関しての、CQI モデルVer.1 ワークシートを用いた研修の経験は、今回のワークショップが初めてです。
当センターでのワークショップは、複数の看護系大学の教員が相互支援をしながらワークをすすめる形態ですが、他テーマで、自大学内の研修でワークシートを使用した例はあります。昨年度、FD講演会についてご相談のあった看護系大学の研修例をご参考までにお示しします。
テーマは、「自大学の強みや使命を活かすCQI(Continuous Quality Improvement)モデルによる看護学教育ワークショップ」でした。教員の入れ替わり等もあり、今後、自大学の強みや使命を活かした活動を検討していくために、CQIモデルのワークシートを使用して分析し、目指す方向性を全教員で共有する場としたいと企画されています。
当日は、以下の構成で2時間半程度のワークショップが実施されています。

・講演:継続的質改善(Continuous Quality Improvement:CQI)モデルについて(講師は当センターから派遣)
・ワーク:同じ領域あるいは、複数領域で小グループを組み、事前課題として、ワークシートAを各自がラフに書いてくる。それをグループ内で共有し、自大学の分析をすすめ、新たな視点を得て(ワークシートB)、各自が何をすべきか確認・発見する(ワークシートC)。各グループの成果を発表し共有する。ワークシートDは参考資料として持ち帰る。