組織変革型看護職育成プログラムの開発プロジェクト

組織変革型看護職育成プログラムの開発プロジェクト

千葉大学大学院看護学研究科附属看護実践研究指導センターでは、「教育―研究―実践をつなぐ組織変革型看護職育成支援プログラムの開発」プロジェクト(平成22年度~26年度)に取り組みました。

このプロジェクトは、看護学教育の高度化と、看護系大学の急増に伴い、大学教育に相応しい臨地実習施設や実習指導者の確保が困難になってきている背景から、立案に至りました。これらの背景は、看護学生の看護実践能力、及び看護職の次世代育成機能の低下と密接に結び付き、新人看護職の離職の増加→中堅看護師の疲弊→組織崩壊→更なる実習施設・実習指導者の不足という悪循環を招いている恐れがあります。悪循環は組織問題であり、もはや個人レベルの自己研鑽や課題解決ではなく、組織変革を推進できる人材育成支援が必要であり、これらを解決するためのプロジェクトが必要であると考えました 。

事業名 教育―研究―実践をつなぐ
組織変革型看護職育成支援プログラムの開発
事業概要 教育―研究―実践の連携を目指した臨地実習施設の組織変革に取り組む看護職育成支援プログラムを開発する。そのプログラムにより支援を受けた看護職が看護の独自性・専門性を強化し、組織変革を推進することによって、看護の臨床現場の組織問題の解決、看護学教育環境の整備を促進する。
目的 教育―研究―実践の連携を目指した組織変革に取り組む看護職育成支援プログラム開発を通じて、組織変革の核となる人材育成支援を実施し、看護の臨床現場の組織問題の解決、看護学教育環境の整備を促進する。

看護実践研究の推進

※下記の2つの研究を、看護の多様な領域の実践者、教育研究者と共同し行いました。

  1. 看護の独自性・専門性を可視化するリフレクション・フレームワークの開発と検証

    保健医療福祉の現場で働く看護職には、リスクマネジメント、看護倫理、管理や人材育成など、専門領域横断的な広範な知識が求められています。しかし、組織の中核となる中堅看護職・看護管理者は、自らの経験に基づいて行動していることが多く、自身の行動の根拠に看護の独自性・専門性があることを自覚しづらい傾向にあります。

    中堅看護職・看護管理者が、組織変革のヴィジョンを描く際には、自らの行動の根拠に看護の独自性・専門性があることを自覚しながらすすめることが重要と考え、本研究に取り組みました。

    その結果、組織変革プロジェクトを遂行する看護職者の思考を、看護の独自性・専門性に基づいて支援するリフレクション*・フレームワークを開発することができました。この成果は、「看護学教育指導者研修」 において、継続的に活用しています。

    *リフレクションは自らの経験の振り返りで、経験した事実とそれについての思考から構成され、そこに意味の付加や拡充がともなう経験の再構築とも呼ばれるものです。

  2. 日本型看護教育-実践連携診断・評価ツールの開発と検証

    臨地実習における看護系大学と臨地実習施設との連携状況を把握するための評価ツールを開発しました。
     本ツールは、看護系大学とその実習病院のトップ管理者同士が今後の連携推進の方向性を話し合うコミュニケーションツールとして開発しました。
     附属病院をもたない看護系大学と病院施設への適用可能性も確認し、幅広く使用して頂けるツールとなりました。
     看護系大学、実習病院のトップ管理者の方はもちろん、看護系大学とその実習病院の連携について関心のある方、多くの皆様にご参照、ご活用頂ければ幸いです。
     なお、使用の際の許可等は不要ですが、使用、引用する際に、当センターで開発されたものであることを明示して下さい。

看護職育成支援プログラムの開発

本事業においては、下記の4つの看護職育成支援プログラムを開発しました。

1)教育―研究-実践をつなぐ臨地実習施設の看護学教育指導者研修<ベーシックコース>

開発当初は、2か月半の集合研修で、講義・演習・実習と課題解決プロジェクトの計画立案までを行い、その後、自施設で課題解決プロジェクトを実施し、数か月後に報告を行う内容としていました。このプログラムの評価から、必要な講義・演習内容が精選できるようになり、臨地実習を改善するための基礎的知識・スキルを学ぶコースとして3日間の集中研修プログラムを開発しました。

現在の「看護学教育指導者研修<ベーシックコース>」と発展しています。

2)教育―研究-実践をつなぐ臨地実習施設の看護学教育指導者研修<アドバンスコース>

1)の開発過程から、臨地実習施設における看護学教育の課題解決に取り組むプロジェクトについて、アクションリサーチ型共同研究を行い、臨地実習における課題解決支援・プロジェクト成果発信支援を受けるコースとして、次のような課題解決型研修プログラムを開発しました 。

対 象 者: 臨地実習に関連した課題を持つ看護系大学教員と臨地実習指導者の組(ペア)で、看護系大学、臨地実習施設の両機関の管理者がプロジェクトの実施を承諾している者
実施期間: プロジェクトは2年間で行い、年度ごとに応募形式で実施する
研修内容: プロジェクトのプロセスを<課題の明確化><計画立案><実施・評価><公表>のフェーズとし、各フェーズにおける達成目標および活動内容・センター教員の支援を明確にしました。内容を見る
プロジェクトの
プロセス
達成目標 活動内容とセンター教員の支援 スケジュール
課題の明確化
  • 共同研究の前提・目標の明確の確認
  • 解決したい課題と今回のプロジェクト研究の最終成果の整理と位置づけ
グループ別ミーティング 1年目
5月ごろまで
  • 共同の準備(必要時)
必要時、センター教員を活用して悪臭解答を実施する 適宜
計画立案
  • 多様な方法論から計画立案する
  • わかりやすい研究計画にする
複数ミーティング 8月~9月まで
  • 倫理審査を2機関で受けることができる
個別支援
倫理審査のサポート
実施・評価
  • 共同研究者を活用して適切なデータ収集を実施する
個別支援
センター教員によるデータ収集含む
~2年目5月
  • 進捗状況の共有機会を利用してスケジュール管理ができる
複数ミーティング 2年目7月位まで
公表
  • プロジェクトの全貌をわかりやすく伝える
  • 公表による意見や関心を踏まえて考察できる
複数ミーティング 2年目5月~3月
施設内・学会論文化

※開発した本プログラムは、平成27~28年度に実施しました。今後は、より実行可能性の高い洗練したプログラム開発に着手予定です。

3)看護管理者向け課題解決プロジェクト型研修プログラム

課題解決プロジェクト型研修のプログラム開発を目指し、課題解決プロジェクトのプロセスにおける困難や必要な支援を見出すために、アクションリサーチ型の共同研究を実施し、次のような研修プログラムを開発しました。

対 象 者: 所属部署における看護管理上の課題を解決したいと考えている看護管理者(看護師長相当以上で職位は問わない)。複数での参加も可能。
実施期間: プロジェクトは2年間で行い、年度ごとに応募形式で実施する
研修内容: プロジェクトのプロセスを<課題の明確化><計画立案><実施・評価><公表>のフェーズとし、各フェーズにおける達成目標および活動内容・センター教員の支援を明確にしました。内容を見る
プロジェクトの
プロセス
達成目標 活動内容とセンター教員の支援 スケジュール
課題の明確化
  • 解決したい問題の本質を見極める
  • 自身の中にある前提、思い込みを外し、客観的に相対化して組織の現状分析ができる
  • 看護管理者としての自分も含めてプロジェ九と研究の対象としてとらえられる
  • 看護管理者として十分なリフレクションができる
グループ別ミーティング
リフレクション・フレームワークの活用
複数ミーティング
1年目
6月ごろまで
計画立案
  • 業務と研究の関係性を整理し、計画立案ができる
  • プロジェクトによる変化を捉えることが可能な方法論を選択する
  • わかりやすい研究計画を立案する
  • 支援しながら、倫理審査を受けることができる
複数ミーティング
リフレクション・フレームワークの活用
倫理審査のサポート
8月~9月まで
実施・評価
  • プロジェクトによって生じた変化について十分にリフレクションする
  • 自身のかかわりも含めた変化をわかりやすく記録し評価する方法を検討する
個別支援
センター教員によるデータ収集含む
リフレクション・フレームワークの活用
~2年目5月
公表
  • プロジェクトの全貌をわかりやすく伝える
  • 公表による意見や関心を踏まえて考察を深める
個別支援
複数ミーティング
2年目5月~3月
施設内、学会論文化

4)看護学教育ワークショップ

本事業の開始年である平成22年度より、当センターが、看護学教育研究共同利用拠点として文部科学大臣より認定されたこともあり、文部科学省主催で実施してきたワークショップを、当センター独自事業として実施することとなりました。このワークショップは、全国の看護系大学の看護学教育カリキュラムに責任をもつ教員を対象とし、毎年設定されたテーマに関して、グループ・ディスカッションを行い、その成果を自大学の教育へと反映させることにより、全体として大学における看護学教育の質向上を目指すことを意図しています。看護教員のFDからのアプローチも求められるようになり、毎年、教員を対象とした研修プログラムとして開催できるものとして開発しました。

現在の「看護学教育ワークショップ」と して発展しています。

組織変革支援型研修事業の成果

本事業の成果として、下記の3つの研修を運営し、評価し、継続できる研修事業として確立いたしました。

※平成18年度からの実践報告書を、「組織変革型看護職育成支援データベース」で検索できます。

情報収集・蓄積・発信

本事業の成果として、パンフレットとニュースレターの発行を定例化することができました。

また、センター事業の成果を中心とした情報発信を目的に据えて、「組織変革型看護職育成支援データベース」を公開しました。

現在、本データベースには、平成18年度より本センターが開講している「国公私立大学病院副看護部長研修」の成果の一つである、実践報告書を公開しています。この実践報告書は、執筆者の承諾を得て公開しており、多様な取り組みを検索することができます 。